REALTOKYO CINEMA

リアルトウキョウシネマです。映画に関するインタビュー、レポート、作品レビュー等をお届けします。

Review

Review62『悪は存在しない』

「自分自身に正直に、おもしろいと思えることをやる」 ーー濱口竜介監督の映画の原点 文・福嶋真砂代 (C)2023 NEOPA / Fictive ※「はてなブログ」仕様によるアンダーバー+リンクはRTCの意図とは関係なく、無視しつつお読みいただければ幸いです。 ■超満員の…

TIFF Review:『雪豹』(第36回東京国際映画祭 コンペティション部門)

ペマ・ツェテン監督の最後の贈り物 取材・文:福嶋真砂代 Snow Leopard@tiffjp2023 『雪豹』(第36回東京国際映画祭グランプリ作品)は、小説家でもあり、チベットの映画監督として世界から称賛を受け、今年急逝したペマ・ツェテン監督の遺作のひとつである…

TIFF Review:『PERFECT DAYS』(第36回東京国際映画祭 オープニング作品)

映画とは、未知の領域への途方もない旅である:ヴィム・ヴェンダース 取材・文:福嶋真砂代 ©2023 MASTER MIND LTD. 第36回東京国際映画祭のオープニングを飾った『PERFECT DAYS』。カンヌ国際映画祭でエキュメニカル審査員賞と最優秀主演男優賞(主演:役所…

TIFF Review:『ゴンドラ』(第36回東京国際映画祭 コンペティション部門)

発想力豊かに、世界はこんなに楽しくなる 取材・文:福嶋真砂代 Gondola© Boryana Pandova ドイツのファイト・ヘルマー監督(『ブラ物語』(TIFF2018コンペティション部門)が『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』の邦題で劇場公開)の最新作が東京国際…

Review 61『ダム』:東京フィルメックス2022 コンペティション

アフリカの壮大な大地と人間の営み 文:福嶋真砂代 The Dam tokyofilmex2022 レバノン出身のビジュアルアーティスト、アリ・チェリの初長編監督作品。まず壮大な画作りのセンスに息を呑んだ。自身の「大地」をテーマとした三部作(ほかには『The Disquiet』…

TIFF Review:『山女』(第35回東京国際映画祭 コンペティション部門)

本年は、映画祭で出会った映画に個人的な経験と感情を重ね合わせ、「喪失」や「不在」、そして「再生」という現象が骨の髄に深くに突き刺さるような体験になりました。事情により受賞作品のほとんどを見逃し残念でしたが(第35回の受賞作品については公式サ…

Info:『コンビニエンス・ストーリー』コラム キネマ旬報掲載のお知らせ

今回は純三木系100%濃縮です 三木聡監督・脚本の『コンビニエンス・ストーリー」についてのコラムを「キネマ旬報8月下旬号」に寄稿しました。 死後、というか死の瞬間、人の魂はどうなるのだろう。たまたま筆者の実姉が他界したばかり、そんな生々しい感覚…

Info:『カモン カモン』レビュー RealTokyo掲載のお知らせ

子どもたちと、未来について考える旅をしよう (C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved. Written by 福嶋真砂代 / 2022.4.26 マイク・ミルズ監督は、自分の子供をお風呂に入れているときにインスピレーションを得て、脚本を書いたという。ど…

Interview 016 舩橋淳さん(『ある職場』監督、撮影、録音、脚本、編集)

時代の無意識を掬いとるような映画を撮りたい 取材・文:福嶋真砂代 © 2020 TIMEFLIES Inc. (※アンダーバー+リンクはRTCの意図とは関係なく「はてなブログ」仕様によるものです。無視しつつお読みいただければと思います。) 「日本のセクシャルハラスメン…

TIFF Review:『四つの壁』(第34回東京国際映画祭 コンペティション部門)

想像力を刺激される夢の世界へ 文・福嶋真砂代 (C)MAD DOGS & SEAGULLS LIMITED 第34回TIFF最優秀男優賞を受賞(アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、 バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥの主演4名 )した『四つの壁』は、バフマン・ゴバディ監督がト…

TIFF Review:『市民』(第34回東京国際映画祭 コンペティション部門)

Copyright 2021 Menuetto/ One For The Road/ Les Films 文・福嶋真砂代 第34回TIFF審査委員特別賞を受賞した『市民』(ベルギー・ルーマニア・メキシコ)は、ルーマニア出身の新人監督テオドラ・アナ・ミハイが全編北メキシコで撮影をした作品。ダルデンヌ…

Review 60『街は誰のもの?』

ブラジルのストリートで「街」について考える 文・福嶋真砂代 (c)KOTA ABE ブラジルのグラフィティに興味を抱いた阿部航太監督(撮影・編集)のデビュー作が公開中だ。単身ブラジルに渡って6ヶ月間(2018-19)滞在し、「街は誰のもの?」というテーマについ…

TIFF Review:『ヴェラは海の夢を見る』(第34回東京国際映画祭 コンペティション部門)

©Copyright 2020 PUNTORIA KREATIVE ISSTRA | ISSTRA 新たな航海に船出した東京国際映画祭 文・福嶋真砂代 第34回東京国際映画祭は、メイン会場を六本木から日比谷・有楽町・銀座エリアへと移転し、プログラミング・ディレクターを交代、部門構成も改変され…

Review 59『リスペクト』

ソウルの女王、アレサ・フランクリンを描く音楽ドラマ 文・フジカワPAPA-Q (C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved. 米国の「ローリング・ストーン」が9月に発表した「歴代最高の500曲」というランキングで第1位に輝いた曲は、ソウ…

Review 58『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』

忘れられた50年前のNYハーレムのフェスが今甦る 文・フジカワPAPA-Q © 2021 20th Century Studios. All rights reserved. これは驚きだ!何と、50年以上も前に撮影されていた幻の音楽フェスの映像が遂に甦ったのだから。1969年の暑い夏、ウッドストック・フ…

Review 57『HHH:侯孝賢 デジタルリマスター版』 

オリヴィエ・アサイヤスにしか撮れない「侯孝賢」の素顔 文・福嶋真砂代 (C) TRIGRAM FILMS, All rights reserved フランスの映画監督オリヴィエ・アサイヤスが台湾の名匠監督ホウ・シャオシェン(侯孝賢)に密着し、ホウ監督の映画制作への原動力とホウ・シ…

Review 56『大地と白い雲』

もうひとつの「地平線」を探して 文・福嶋真砂代 ©️2019 Authrule(Shanghai)Digital Media Co.,Ltd,Youth Film Studio ALL Rights Reserved. 公開中の映画『大地と白い雲』の始まりがおもしろい。妻のサロールがバイクに乗り夫を探す。口々に「チョクト」が…

Review 55『83歳のやさしいスパイ』(レビュー&TIFF公式 監督インタビュー)

意表をつく“スパイ映画”に心ほっこり 文・福嶋真砂代 (C)2021 Dogwoof Ltd - All Rights Reserved ドキュメンタリー映画で国際的評価の高いチリのマイテ・アルベルティが監督・脚本を手掛けた『83歳のやさしいスパイ』(第33回東京国際映画祭ワールド・フォ…

Review 54『アメイジング・グレイス /アレサ・フランクリン』

ソウルの女王が歌う1972年のゴスペル・ライヴ 文・フジカワPAPA-Q 2018(C)Amazing Grace Movie LLC ソウルの女王、アレサ・フランクリンは、1942年3月25日にメンフィスで生まれ、2018年8月16日にデトロイトで76歳で亡くなった。1960年代後半から、世俗音楽の…

Review 53『逃げた女』

なぜホン・サンスはクセになるのか? 文・福嶋真砂代 (C)2019 Jeonwonsa FilmCo. All Rights Reserved 「ホン・サンスはクセになる」といわれる。なぜだろう。そこには熱狂というような激しい感覚より、ジワジワくる低温性の熱を帯びる感触がある。そんなホ…

Review 52『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』

こころ震える、香港を愛するデニスのうた 文・福嶋真砂代 ©Aquarian Works, LLC 第21回東京フィルメックス(特別招待作品)にてジャパンプレミアされたドキュメンタリー『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』が劇場公開になる。香港「雨傘運動」に参加し…

Review 51『茜色に焼かれる』

自転車をこぐ良子の背中に自分を重ねていた 文・福嶋真砂代 ©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ 「まあがんばりましょう」そう言うことで「大丈夫よ」を演じているような主人公の田中良子(尾野真千子)は、中学生の一人息子純平(和田庵)を育て…

Review 50『ブックセラーズ』

本のラビリンスへ迷い込む悦楽の時間 文・福嶋真砂代 (C)Copyright 2019 Blackletter Films LLC All Rights Reserved ニューヨーク(NY)最大のブックフェアを入り口に、稀少本(レアブック)のラビリンスへいざなうドキュメンタリー映画『ブックセラーズ』…

Review 49『春江水暖~しゅんこうすいだん』

古今が溶けあう、壮大な人生の絵巻物のはじまりはじまり 文・福嶋真砂代 ©2019 Factory Gate Films All Rights Reserved ■春江の魚のスズキと、市井の人々 話題の『春江水暖~しゅんこうすいだん』がいよいよ日本公開に。中国の新鋭、グー・シャオガン監督の…

Review 48『羊飼いと風船』

チベットの大草原に読み解く、過去、現在、未来 文:福嶋真砂代 (C)2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved. 『気球』というタイトルで第20回東京フィルメックス(最優秀作品賞受賞)にて発表された本作は新しく『羊飼いと風船』とタイトルを変えて、…

Review 47『あのこは貴族』

さても聡明な女性は潔く、かっこいい 文・福嶋真砂代 ©山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会 2021年2月劇場公開予定の『あのこは貴族』(第33回東京国際映画祭にて特別招待作品ワールドプレミア上映)。山内マリコの同名小説が岨手由貴子監督・脚…

Review 46(TIFF): 『ムクシン』[4Kデジタル修復版](第33回東京国際映画祭 ワールドフォーカス部門)

どうしたら傷を癒し、許し合い、また共生できるのか 文・福嶋真砂代 第33回東京国際映画祭(TIFF2020)はコロナ禍で規模を縮小して、タイトな感染防止管理のもとなんとか無事に開催された。そんななか、心温まる伝説の作品、ワールドフォーカス部門にて上映…

Review 45『メイキング・オブ・モータウン』

デトロイト発、モータウン初期13年の音楽記録 (C)2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved 先日、米国の「ローリング・ストーン」誌が発表した2020年版「歴代最高のアルバム500」で1位に選ばれたのは、マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイング・オ…

Review 44『Daughters』

美しい季節、眩いばかりの彼女たち 文:福嶋真砂代 (C) 「Daughters」製作委員会 異色作『Daughters』(津田肇 脚本・監督)が現在公開中である。ルームシェアをしている若いふたりの女性、小春(三吉彩花)と彩乃(阿部純子)が主人公。それぞれイベントデ…

Review 43『死霊魂』

「そこで何が起きたのか?」悲劇の真実を探り記す、魂の旅 ©LES FILMS D’ICI-CS PRODUCTIONS-ARTE FRANCE CINÉMA-ADOK FILMS-WANG BING 2018 ●ワン・ビン独特の「意外性」にいざなわれて 中国のワン・ビン監督(以下、ワン・ビン)のドキュメンタリー『死霊…