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Review 58『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』

忘れられた50年前のNYハーレムのフェスが今甦る

文・フジカワPAPA-Q

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© 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

これは驚きだ!何と、50年以上も前に撮影されていた幻の音楽フェスの映像が遂に甦ったのだから。1969年の暑い夏、ウッドストック・フェスと同じ年に、NYマンハッタンのハーレムの公園で計6回開かれた無料イベントで、ブラック・パンサー党が警備を担当した「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」であった。その映像を映画化したのが、この『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』だ。副題は、ギル・スコット=ヘロンの1971年の名曲「革命はテレビ放送されない」に由来する。監督・製作総指揮を務めたのは、ヒップホップ・グループ、ザ・ルーツのドラマーでプロデューサーでDJのアミール “クエストラヴ” トンプソン。

映画に登場するのは、ソウルのスティーヴィー・ワンダー、チェンバース・ブラザーズ、フィフス・ディメンション、ステイプル・シンガーズ、デヴィッド・ラフィン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、スライ&ザ・ファミリー・ストーン(写真)。ゴスペルのエドウィン・ホーキンス・シンガーズ、マへリア・ジャクソン、メイヴィス・ステイプルズ。ブルースのB.B.キング。ジャズのハービー・マン、ソニー・シャーロック、マックス・ローチアビー・リンカーンヒュー・マセケラニーナ・シモン。ラテンのモンゴ・サンタマリア、レイ・バレット。という豪華な顔ぶれにはスゴい!としか言い様がない。

そして、当時観客だった人々のインタビューや、シーラ・E、リン=マニュエル・ミランダ(映画『イン・ザ・ハイツ』原作と作詞作曲)のコメント等、現在からの視点で1969年夏の本質を炙り出す。暑い夏は暴動の季節でもあった訳だが、当時のNY市長ジョン・リンゼイも出演する大イベントでもあったので、実は暴動の抑止効果もあったという話も出てくる。更に、BLM運動等にも繋がる、過去・現在・未来を照射するという、監督の手腕は見事だ。今年のサンダンスで2つ受賞した。しかし、1回見ただけでは場面の細部が分からないよ!(個人的には、モンゴ・サンタマリアやレイ・バレットの場面にいる他のラテン音楽家は誰だ?とか悩ましい(笑)

Information:

原題:SUMMER OF SOUL (OR, WHEN THE REVOLUTION COULD NOT BE TELEVISED)
監督:アミール・“クエストラブ”・トンプソン
出演:スティーヴィー・ワンダーB.B.キングフィフス・ディメンション、ステイプル・シンガーズ、マヘリア・ジャクソン、ハービー・マン、デイヴィッド・ラフィン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、モンゴ・サンタマリアソニー・シャーロック、アビー・リンカーンマックス・ローチヒュー・マセケラニーナ・シモンほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
  

2021年827日(金)全国公開

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