REALTOKYO CINEMA

リアルトウキョウシネマです。映画に関するインタビュー、レポート、作品レビュー等をお届けします。

Review 47『あのこは貴族』

さても聡明な女性は潔く、かっこいい 文・福嶋真砂代 ©山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会 2021年2月劇場公開予定の『あのこは貴族』(第33回東京国際映画祭にて特別招待作品ワールドプレミア上映)。山内マリコの同名小説が岨手由貴子監督・脚…

Review 『カナルタ 螺旋状の夢』(太田光海 監督・撮影・編集・録音)

セバスティアンがうたえば、森羅万象と交信がはじまる 『カナルタ 螺旋状の夢』の東京ドキュメンタリー映画祭2020<特集 映像の民族誌>におけるジャパンプレミア上映(2020/12/9)は満席となり、注目度の高さを伺わせた。監督の太田光海(おおたあきみ)は…

Review 46(TIFF): 『ムクシン』[4Kデジタル修復版](第33回東京国際映画祭 ワールドフォーカス部門)

どうしたら傷を癒し、許し合い、また共生できるのか 文・福嶋真砂代 第33回東京国際映画祭(TIFF2020)はコロナ禍で規模を縮小して、タイトな感染防止管理のもとなんとか無事に開催された。そんななか、心温まる伝説の作品、ワールドフォーカス部門にて上映…

Interview 014 小森はるかさん(『空に聞く』監督・撮影・編集)

陸前高田の、とおい未来のこどもたちにも見てほしい @realtokyocinema2020 小森はるか監督へのインタビューは、長編デビュー作『息の跡』から3年半ぶりとなる。最新作『空に聞く』は、COVID-19で世界がひっくり返る寸前の、第12回恵比寿映像祭(「時間を想…

Review 45『メイキング・オブ・モータウン』

デトロイト発、モータウン初期13年の音楽記録 (C)2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved 先日、米国の「ローリング・ストーン」誌が発表した2020年版「歴代最高のアルバム500」で1位に選ばれたのは、マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイング・オ…

Review 44『Daughters』

美しい季節、眩いばかりの彼女たち 文:福嶋真砂代 (C) 「Daughters」製作委員会 異色作『Daughters』(津田肇 脚本・監督)が現在公開中である。ルームシェアをしている若いふたりの女性、小春(三吉彩花)と彩乃(阿部純子)が主人公。それぞれイベントデ…

Review 43『死霊魂』

「そこで何が起きたのか?」悲劇の真実を探り記す、魂の旅 ©LES FILMS D’ICI-CS PRODUCTIONS-ARTE FRANCE CINÉMA-ADOK FILMS-WANG BING 2018 ●ワン・ビン独特の「意外性」にいざなわれて 中国のワン・ビン監督(以下、ワン・ビン)のドキュメンタリー『死霊…

Review 42『その手に触れるまで』

絶望のなかでも「人間の力」を信じて模索する、ダルデンヌ兄弟最新作 文:福嶋真砂代 © Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF ベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟の最新監督作『その手に触れるまで』は、新型コロナウイルスの…

Interview 013 想田和弘さん(『精神0』監督・製作・撮影・編集)

「なんで生きるんだろう?」そんな疑問を抱き続けてきた 想田和弘監督の観察映画第9弾『精神0』が「仮設の映画館(http://www.temporary-cinema.jp/)」にて公開中(配信中)だ。新型コロナウイルスで世界が騒然とする中、新作を携えて来日した想田さんに…

Report: 『春江水暖』Q&A(東京フィルメックス2019、コンペティション)

ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤン監督の“映画遺伝子”受け継ぐ中国の新星 第20回東京フィルメックスで観た作品の中で特に印象深かったのは、グー・シャオガン監督の長編デビュー作『春江水暖』(審査員特別賞受賞)でした。浙江省杭州市の富陽を舞台に、…

2019年 わたしの10大イベント「CINEMA10」

REALTOKYO CINEMA(RTC)は4年目を迎えました。今年もよろしくお願いいたします。さて年頭の恒例行事「わたしの10大イベント - CINEMA10」(シネマテン)を発表します。「2019 RTC CINEMA10」では建築家の石井大吾さんを新メンバーに迎えてパワーアップ! 映…

Interview ロウ・イエさん(『シャドウプレイ』監督、『夢の裏側~ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』出演):東京フィルメックス2019

アーティストの使命は信念を持って前へ進み続けること (c) DREAM FACTORY, Travis Wei 第20回東京フィルメックスのオープニング『シャドウプレイ』のために来日したロウ・イエ監督にインタビューした。合わせて特別招待作品として上映された『夢の裏側~ドキ…

TIFF Report: 『わたしの叔父さん』(第32回東京国際映画祭 コンペティション部門)レビュー&記者会見レポ

人間にとって大切なものを静かに問いかける北欧映画 取材・文:福嶋真砂代 © 2019 88miles 第32回東京国際映画祭コンペティション部門 東京グランプリの栄冠に輝いたのはデンマークユトランド地方を舞台にした『わたしの叔父さん』。フラレ・ピーダセン監督…

Review 41『37セカンズ』(第32回東京国際映画祭 Japan Now部門)

ユマの心意気がつくりだす優しいミラクル 文:福嶋真砂代 (C)37Seconds filmpartners 生まれた時に37秒間、呼吸が止まっていたことで身体に障害を負い、車椅子で生活する23歳のユマは、シングルマザーの母親とふたり暮らし。漫画家志望の彼女は友人のゴース…

TIFF Report: 『タイトル、拒絶』(第32回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門)Q&A

デリヘル舞台裏を描く、愛と葛藤の群像劇 取材・文:福嶋真砂代 @DirectorsBox その言葉とは裏腹に、吸引力バツグンに魅力的なタイトルの本作は、劇団「□字ック」(ロジック)主宰の山田佳奈監督が6年前に舞台のために書き上げた脚本を映画化した、長編監督…

Info 「第20回東京フィルメックス 」受賞結果

第20回東京フィルメックスはアジア映画の豊かさ、奥深さを堪能、また多様さと複雑さを確認し、興奮のなかで幕を閉じました。受賞結果は以下のとおりです。 最優秀作品賞(グランプリ)『気球』(ペマツェテン監督) 審査員特別賞『春江水暖』(グー・シャオ…

info「第20回東京フィルメックス」がはじまります(11/23-12/1)

秋が深まるとやってくる、アジア映画の祭典「東京フィルメックス」 今年も有楽町朝日ホール(有楽町マリオン)をメイン会場に、レイトショー会場としてTOHOシネマズ 日比谷にて、11月23日(土)から12月1日(日)まで開催されます。 オープニング作品『シャ…

Review 40『細い目』

金城武不在の“カネシロ映画”でヤスミン監督が見つめた「未来」とは 文:福嶋真砂代 「金城武」の引力でたどり着いた深いヤスミンの世界 2009年に51歳で急逝したマレーシアのヤスミン・アフマド監督の人気作品『細い目』(2005)は、これまでも特集上映や映画…

Review 39『ある船頭の話』レビュー& オダギリジョー監督インタビュー

桃源郷のような映像美にこもる深い思い @MasayoFukushima 「これが僕のひとつの答え」と語りだすまで、どれだけの痛みと試練を乗り超えたのだろうか。長編初監督作品『ある船頭の話』の公開を待つオダギリ ジョー監督に現在の心境を伺った。最近ではCMで演じ…

Review 38『ジョアン・ジルベルトを探して』

ボサノヴァの始祖、ジョアン・ジルベルトを求める旅 ©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018 アントニオ・カルロス・ジョビン(作曲家、ピアニスト)、ヴィニシウス・ヂ・モライス(作詞家)と共にボサノヴァを創始した、ブラジルの歌手、ギタリスト…

Interview 012ピート・テオインタビュー(「伝説の監督 ヤスミン・アフマド特集」&『自由行』)

僕の問題は「ノー」と言えないことかな ピート・テオさん シアター・イメージフォーラムで開催中(7/20~8/23)の「伝説の監督 ヤスミン・アフマド特集」に際して来日したピート・テオ(『グブラ』楽曲、『タレンタイム』楽曲&音楽)にインタビューした。映画…

Review 37『僕はイエス様が嫌い』

ミニマルな語り口に宿る深い思慮、祈り ©︎2019 閉会宣言 公開中の『僕はイエス様が嫌い』(英語タイトル「JESUS」)は、弱冠22歳(制作当時)の奥山大史(おくやまひろし)が監督、脚本、撮影、編集を手がけた長編デビュー作。第19回東京フィルメックスに出…

Review 36『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

ニューヨーカー気分で体験する“進化系図書館” © 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved 本作が42本目のドキュメンタリー作品となる巨匠監督、フレデリック・ワイズマンが誘(いざな)うのは、超有名な観光スポットでもある「ニューヨーク公共図書…

Review 35『ワイルドツアー』

© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] RealTokyoに『ワイルドツアー』レビューを寄稿しました。 「青春のきらめく瞬間(トキ)をつかまえて」 山口県山口情報芸術センター[YCAM]、磯崎新設計による建物の流線型の屋根の上を若者たちがスイスイ歩き…

Review 34 『マイ・ブックショップ』

コイシェ監督が共感した「自分らしさ」貫く女性の生き方 © 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd. 映画の原作、ペネロピ・フィッツジェラルドの小説「The Bookshop」を読んだイザベル…

Review 33『バハールの涙』

©2018 – Maneki Films – Wild Bunch – Arches Films – Gapbusters – 20 Steps Productions – RTBF (Télévision belge) RealTokyoに『バハールの涙』レビューを寄稿しました。 「ヤズディの女性たちの恐怖と苦痛から目を背けてはならない」 実話に基づいて作…

2018年 わたしの10大イベント「CINEMA10」

REALTOKYO CINEMAはおかげさまで3年目を迎えました。今年もよろしくお願いいたします。そしてすっかり年頭の恒例行事になった「CINEMA10」の発表です。今回もさまざまなフィールドで活動する6人の旧RealTokyoメンバーが、2018年に観た映画から心に残る10本…

TIFF Report :『三人の夫』(東京国際映画祭2018 コンペティション部門)レビュー&記者会見レポ

香港からひとりの女優の強烈すぎる誕生を目撃 取材・文:福嶋真砂代 ©Nicetop Independent Limited 『ドリアン、ドリアン』(2000)、『ハリウッド★ホンコン』(2001)に続く、香港のフルーツ・チャン監督の「娼婦三部作(売春三部作とも)」を締めくくる『三…

Report: 『自由行』Q&A(東京フィルメックス2018、コンペティション)

この作品を作ることで変革を起こしたい 第19回東京フィルメックスにて上映された『自由行』は、中国から自主亡命しているイン・リャン監督が自身の経験をもとに描いた意欲作。物語は、香港に住む映画監督のヤンが、広告の職を辞したフリーの夫と幼い息子を伴…

Review 32『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』

タンゴの革命者、アストル・ピアソラの生涯を描く ©Daniel Rosenfeld /© Juan Pupeto Mastropasqua タンゴのバンドネオン奏者、作曲家アストル・ピアソラ(1921〜1992)の生涯を描いたドキュメンタリー映画が公開中だ。ピアソラは幼少期にニューヨークへ移…