REALTOKYO CINEMA

リアルトウキョウシネマです。映画に関するインタビュー、レポート、作品レビュー等をお届けします。

Review 35『ワイルドツアー』

© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] RealTokyoに『ワイルドツアー』レビューを寄稿しました。 「青春のきらめく瞬間(トキ)をつかまえて」 山口県山口情報芸術センター[YCAM]、磯崎新設計による建物の流線型の屋根の上を若者たちがスイスイ歩き…

Review 34 『マイ・ブックショップ』

コイシェ監督が共感した「自分らしさ」貫く女性の生き方 © 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd. 映画の原作、ペネロピ・フィッツジェラルドの小説「The Bookshop」を読んだイザベル…

Review 33『バハールの涙』

©2018 – Maneki Films – Wild Bunch – Arches Films – Gapbusters – 20 Steps Productions – RTBF (Télévision belge) RealTokyoに『バハールの涙』レビューを寄稿しました。 「ヤズディの女性たちの恐怖と苦痛から目を背けてはならない」 実話に基づいて作…

2018年 わたしの10大イベント「CINEMA10」

REALTOKYO CINEMAはおかげさまで3年目を迎えました。今年もよろしくお願いいたします。そしてすっかり年頭の恒例行事になった「CINEMA10」の発表です。今回もさまざまなフィールドで活動する6人の旧RealTokyoメンバーが、2018年に観た映画から心に残る10本…

TIFF Report :『三人の夫』(東京国際映画祭2018 コンペティション部門)レビュー&記者会見レポ

香港からひとりの女優の強烈すぎる誕生を目撃 取材・文:福嶋真砂代 ©Nicetop Independent Limited 『ドリアン、ドリアン』(2000)、『ハリウッド★ホンコン』(2001)に続く、香港のフルーツ・チャン監督の「娼婦三部作(売春三部作とも)」を締めくくる『三…

Report: 『自由行』Q&A(東京フィルメックス2018、コンペティション)

この作品を作ることで変革を起こしたい 第19回東京フィルメックスにて上映された『自由行』は、中国から自主亡命しているイン・リャン監督が自身の経験をもとに描いた意欲作。物語は、香港に住む映画監督のヤンが、広告の職を辞したフリーの夫と幼い息子を伴…

Review 32『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』

タンゴの革命者、アストル・ピアソラの生涯を描く ©Daniel Rosenfeld /© Juan Pupeto Mastropasqua タンゴのバンドネオン奏者、作曲家アストル・ピアソラ(1921〜1992)の生涯を描いたドキュメンタリー映画が公開中だ。ピアソラは幼少期にニューヨークへ移…

Review 31 『エリック・クラプトン~12小節の人生~』

エリック・クラプトンを描く音楽ドキュメンタリー © BUSHBRANCH FILMS LTD 2017 夏にレコード屋でたまたま見つけたのがエリック・クラプトンのアルバム『LIFE IN 12 BARS』。映画『エリック・クラプトン 12小節の人生』のサントラ盤だった。彼の音楽人生の前…

TIFF Report :『ブラ物語』(東京国際映画祭2018 コンペティション部門)レビュー

字幕も翻訳もいらない、本当の意味でユニバーサルな映画が実現した ーー取材・文:福嶋真砂代 ©2018 Veit Helmer – Filmproduktion, Theo Lustig ©2018 Theo Lustig 空から舞い降りていく鳥のように、優しいバイオリンの響きに乗って、高原の小さな街に近づ…

Report 10『ポルトの恋人たち〜時の記憶』マスタークラス@アテネ・フランセ文化センター

「時代の無意識」について思いを馳せるとき(モレイラ、柄本、舩橋が抱く映画へのディープな思いを聴く) 取材・文:福嶋真砂代 市山尚三さん、アナ・モレイラさん、柄本佑さん、舩橋淳監督 @reatokyocinema 『ポルトの恋人たち〜時の記憶』の公開に先がけて…

TIFF Report:Japan Now 「映画俳優、役所広司」黒沢清&役所広司トークイベント(『CURE』)

“この社会でストレスがまったくない人間というのはこんなにも恐ろしいのか......” ーー取材・文: 福嶋真砂代 @realtokyocinema2018 第31回東京国際映画祭のJapan Now部門 特集企画「映画俳優 役所広司」のなかで『CURE』(黒沢清監督/1997)が上映され、黒沢…

Review 30 『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』

© 2015 Moulins Films LLC All Rights Reserved RealTokyoに『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』レビューを寄稿しました。 「町が、世界が、ここに凝縮されて呼吸する」 フレデリック・ワイズマン監督が撮るニューヨーク、クィーンズのジャクソン…

Review 29『愛と法』

均質社会に問う、多様化に向かう覚悟と準備は? (C)Nanmori Films ドキュメンタリー映画『愛と法』は、大阪で「なんもり法律事務所」を経営する弁護士の南和行(カズ)と吉田昌史(フミ)が主人公。仕事でもプライベートでも共にパートナーであり、瀟洒な…

Review 28『オーケストラ・クラス』

音楽は素晴らしい。自由と希望の力をチャージする © 2017 / MIZAR FILMS / UGC IMAGES / FRANCE 2 CINÉMA / LA CITÉ DE LA MUSIQUE - PHILHARMONIE DE PARIS 遠くにエッフェル塔が見えるパリのビルの屋上で熱心にバイオリンを練習する少年、アーノルド。西ア…

Review 27『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ☆アディオス』

キューバの世界的音楽家集団よ、永遠に! © 2017 Broad Green Pictures LLC 米国の世界的音楽家ライ・クーダーが1996年にキューバに行き、ベテラン・ミュージシャン達と制作したアルバムが『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(以下BVSC)で、BVSCは彼等の…

Interview 011 アンナ・ザメツカさん(『祝福~オラとニコデムの家~』監督・脚本)

子どもは子ども時代に「子ども」として過ごさなければ、悪循環が起こるだろう 処女作『祝福~オラとニコデムの家~』が公開中のポーランドのアンナ・ザメツカ監督にインタビューした。本作は2017年、山形国際ドキュメンタリー映画祭で最高賞のロバート&フラ…

Interview 010 想田和弘さん(『ザ・ビッグハウス』監督・製作・撮影・編集)

生意気な人間をどれだけ増やすかが、本来の教育の目的でなければいけない ジム・ジャームッシュの言葉に刺激を受けて渡米を決意し、以来20年以上居住する「アメリカ」にカメラを向けた、想田和弘監督観察映画第8弾『ザ・ビッグハウス』。『港町』に引き続き…

Interview 009 安宅紀史さん(沖田修一監督『モリのいる場所』美術監督)

映画のなかで蘇る、画家・熊谷守一の世界を生んだ「家」と「庭」 (c)2017「モリのいる場所」製作委員会 下駄を履く音。鳥の声。三角帽をかぶり、両手に杖をとる。「行ってきます」。そう言って94歳の画家、モリこと熊谷守一(山崎努)が向かったのは自宅の庭…

Review 26『ユートピア』

仮想現実とこの世界はこうやってリアル融合する (C) UTOPIA TALC 2018 現在、下北沢トリウッドにて公開中のSFファンタジー映画『ユートピア』。伊藤峻太監督(『虹色☆ロケット』(2007))が、監督のほかに、脚本、編集、VFX、主題歌の作詞作曲を手がけてい…

Interview 008 平栁敦子さん(『オー・ルーシー!』監督・脚本)

繊細に大胆に、映画とシンクする気鋭の新人監督 公開中の長編デビュー作『オー・ルーシー!』の監督・脚本を務めた平栁敦子さんがアメリカから帰国し、インタビューした。17歳で単身渡米し、サンフランシスコ、ニューヨークで演劇、映画を学んだ。大学院修了…

Review 25『泳ぎすぎた夜』

ありえないほどの奇跡がおこる雪の日の冒険 (C)2017 MLD Films / NOBO LLC / SHELLAC SUD 実際に暮らしてみることで、その土地や街からインスピレーションを得て、物語を紡ぎ出す、そんなアプローチで撮られた『泳ぎすぎた夜』は、五十嵐耕平とダミアン・マ…

Interview 007 想田和弘さん(『港町』監督・製作・撮影・編集)

もう“忍者”じゃない、観察映画の新境地 最新作『港町』(観察映画 第7弾)が公開となる想田和弘監督に、『選挙』(2007)から数えて6回目となるインタビューをした。『港町』は、前作『牡蠣工場』(2015)の制作と並行して撮られたドキュメンタリーで、妻の…

Report 9「めぐりあい JAXA 2018 -かぐやとだいちとわたしたち-」の観望会@せんがわ劇場(調布映画祭)

衛星『だいち』が捉えた地表(東北地方)、何を語る? 文:福嶋真砂代 2018年2月17日、せんがわ劇場にて「めぐりあいJAXA 2018 -かぐやとだいちとわたしたち」の観望会(調布映画祭)」が行われ、会場は宇宙ファンと地元のみなさんで満員になりました。昨年…

Review 25『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』

お笑いでオブラートし重病の核心に迫る (C)2017 WHILE YOU WERE COMATOSE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. はたしてアメリカは目覚めることができるのか? はたまた重病のまま眠りについてしまうのか? そんなことを考えさせるタイトル「ビッグ・シック」とはな…

Review 26『ぼくの名前はズッキーニ』

辛く苦しい思いをしている子どもたちに贈る優しいエール(もちろんおとなへも) (C)RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016 大きな目、赤い鼻、青い髪…

2017年 わたしの10大イベント「CINEMA10」+

2016年10月11日にスタートしたREALTOKYO CINEMAは、おかげさまで2年目に突入しました。さて遅まきながら、2017年に観た映画の中で印象に残る10本を選ぶ第2回「CINEMA10」を発表いたします。今年もそれぞれの場所で活躍するREALTOKYOゆかりのライターたち(…

Review 25『サファリ』

後味の悪さが癖になる、ザイドルのアフリカドキュメンタリー WDR Copyright © Vienna 2016 ▪️トロフィ・ハンターたちを粛々と狙う、ある意味ハンターなザイドル オーストリアのウルリヒ・ザイドル監督。フィクション『パラダイス3部作 愛/神/希望』でもユニ…

Review 24『ライオンは今夜死ぬ』(と「こども映画教室」)

映画の“ねんりき”が未知の扉をあける © 2017-FILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BAL THAZAR-BITTERS END 南仏の陽光の中で語られる老いと死 マネかルノアールかセザンヌか、さながら印象派の絵画を思わせるような美しいポスタービジュアルに目を奪われる…

Report 08-2『天使は白をまとう』(東京フィルメックス2017、特別招待作品)

@22 HOURS FILMS 第18回東京フィルメックス(2017/11/18ー26)の中でもゾクゾクが止まらなかった作品。この映画に出会えてつくづくよかったと思ったことを記憶している。中国南部の海辺の町。リゾートっぽい風景だが、どこか寒々と寂れたロケーション。砂浜…

Report 08-1『ジョニーは行方不明』(東京フィルメックス2017 Q&A)

第18回東京フィルメックス(2017/11/18ー26)は25本の国内外の刺激的な作品が上映され、今年も豊かな実りを残した。(コンペティション部門の受賞結果) そのなかで個人的に特に印象に残った3本に絞ってご紹介。まずコンペティション部門『ジョニーは行方不…