ボストン市庁舎の内部に入り込み、「市民のためにはたらく市政」とマーティン・ウォルシュ市長(当時)にカメラを向けた『ボストン市庁舎』が公開となるフレデリック・ワイズマン監督、そしてワイズマン作品から多大な影響を受けたと語る想田和弘監督のZOOM対談が行われ、「訳・構成・文」として参加しました。
ボストン生まれのワイズマン監督から個人的に感じてる”イナセな職人気質”。というのは、こうと決めたらテコでも動かない一徹さ(それは映画を撮るための「契約」の話にも伺える)、自らマイクを持って撮影現場で走り回るフットワークと、「その瞬間」を逃したくなくてじっと待っている忍耐力が示している。そんな重労働な撮影を50年以上、91歳のいまも精力的にこなしている。
方や「僕の作品はあなたの作品に多大な影響を受けている」とワイズマン監督をリスペクトする、ドキュメンタリー作家の想田和弘さんは、「あなたが映画を撮り続ける体力にはどんな秘密があるのですか」と切り込む。「観察映画」と呼ばれる想田監督のドキュメンタリーを観た方は共感していただけるかと思うのですが、語弊を恐れずに表すなら、なかなか「しつこい」映画監督のひとりです。被写体を追いかけて「ここぞ」という時にはテコでも引き下がらない(ワイズマン流に似ています)。ダメだと言われても納得するまで食い下がる映画魂のかたまり。そんな想田さんが対談では、ワイズマン監督にジリジリと、言うなら、ボクサーが相手をリングのコーナーに追い詰めていく、まさにそんな感じがしたインタビュー現場を、息を潜めながら目の当たりにしました。「これぞドキュメンタリー作家」だと、改めてその鋭い切り込み方に震えました。もちろんワイズマン監督はその独特のクールなユーモアを持って穏やかに和やかに応えながらも、なんだか凄い「嵐」が吹き抜けたような(決して喧嘩のような雰囲気ではなく)感覚がわたしの中に残りました。
残念ながら字数制限のためにその一部始終を掲載できないのですが、想田監督は存分にワイズマン監督の「映画の流儀」の秘技を引き出しきったと思ったのでした。
ぜひARASHI"Record of Memories”の美しいブルーの表紙の「キネマ旬報」11月下旬号でチェックしてください。映画『ボストン市庁舎』もお見逃しなく。
Information:
『ボストン市庁舎』City Hall
監督: フレデリック・ワイズマン、製作: フレデリック・ワイズマン、カレン・コニーチェク
2020年/アメリカ/4時間34分
配給: ミモザフィルムズ、ムヴィオラ
2021年11月12日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー