REALTOKYO CINEMA

リアルトウキョウシネマです。映画に関するインタビュー、レポート、作品レビュー等をお届けします。

Review 36『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

ニューヨーカー気分で体験する“進化系図書館”

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© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

本作が42本目のドキュメンタリー作品となる巨匠監督、フレデリック・ワイズマンが誘(いざな)うのは、超有名な観光スポットでもある「ニューヨーク公共図書館(NYPL)」だ。NYPLとは、マンハッタン五番街の本館に加えて4つの研究図書館、さらに88の分館を含む「図書館ネットワーク」全体をさす。この大規模で複雑な施設の各所に(それでもNYPLのほんの一部ではあるが)ワイズマンとカメラマンのジョン・ディヴィーが入り込み、公共*1図書館の「本当のすがた」を撮り尽くした。205分の長尺。しかしこの長さにひるんではいけない。しばしの間、ニューヨーカーになって味わう図書館での貴重すぎる臨場体験。思いがけない刺激が待っている。いざ、奥へ奥へと進もう! 

図書館は人である

リチャード・ドーキンス博士の刺激的なトークに始まり、進みゆくとエルヴィス・コステロが父を語り、往年の父が歌う映像を観客と一緒に見るというサプライズ。さらにミュージシャンで詩人のパティ・スミスが自身の回想記についてトークするなど、豪華なシーンが待っている。かと思えば、図書館員たちの地道な日常業務に密着。図書館ユーザーからのどんな問い合わせにも、的確な提案をするプロフェッナルな司書たち、あるいは裏方スタッフたちの仕事ぶりに惚れ惚れする。

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© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

映画全体を俯瞰すると、図書館で起こる知的、芸術的、事務的、経営的なピースが並べられ、綿密な計算のもとにコラージュされたタペストリーのように見えてくる(ワイズマン自身は「何千もの選択を行った結果生まれたモザイク」と語っている)。あるスタッフミーティングで交わされるのは、ITと図書館の関わりについての興味深い議論。別のシーンで飛び出す図書館の進化という言葉にハッとする。また建築家は「図書館は人」であると語り、図書館は「単なる書庫ではない」と強調する。図書館で開催される地域住民への就職斡旋セミナーや障害者と芸術を繋げる熱心な活動も見る。この図書館を“進化系”と呼ばずして何と呼ぼう?

公演会ゲストの詩人はジェームズ・ボールドウィンの言葉を引用する。「我々は、何が起きているのか、知るしかない。なぜなら、今のすべてにウンザリしているのだから。言葉は直接的だが暗示にもなる。ブルース歌手のように。」珠玉の言葉がシンプルに胸に響いてくる。また手話通訳者のために市民ボランティアが朗読するジェファーソン独立宣言を2つの形態で聴く。ひとつは「怒り」をこめたボイスで、そしてふたつめは「懇願」を込めたボイスで。これはアメリカの根幹に触れる圧巻の体験だ。

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© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

 進化が止まらないワイズマン

ワイズマンの撮影方法、編集術はユニークだ。インタビューで映画の「正しい尺」について聞かれたワイズマンは、「僕が語りたい物語にふさわしい長さだよ。僕は作品を作る前に作品の構造や視点を決めることはない。構造や視点は、編集の過程で浮かび上がってくるんだ。うぬぼれた言い方に聞こえるのを承知で言うけれど、僕にできることは、自分がどう考えるのかを見極めて、自分の判断に従うことだけなんだ。」続けて、編集作業が終わったと判断する時点とはの質問に、「手元にある素材をもとに、自分のベストを尽くしたと思えたときに作品が完成するんだ」と答える。筆者がインタビューを重ねてきた映画作家想田和弘もその系譜にある。音楽を特につけない(ナレーションもない)ワイズマン作品には、実のところ多彩な音楽が流れているように個人的に思う。ワイズマンの魂のリズム、グルーヴを感じる。おもしろいのは、つい内容にのめり込んでいる瞬間、あっさりと図書館周辺の風景の映像に切り替わるタイミング。朗読されるマイルス・ホッジスのクールな詩のリズムのように緩急変化も凄い。『NYPL』はこれまでの作品より、より研ぎ澄まされ、インテグレートしている熱量を感じる。つまりワイズマン作品はつねにベストオブベストなのだ。

ちょっと脱線するが、“図書館”という場所は、小説家にもこよなく愛されてきた。たとえば村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』や『海辺のカフカ』に描かれる図書館の魔法がかった空間。または短編『図書館奇譚』に描かれる羊と美少女が棲む図書館の地下牢のように、図書館はいつだって想像力を掻き立てられる素材なのだ。映画は、図書館のプラクティカルな機能、運営方法、資金調達等々、図書館のベールに包まれた舞台裏をみせてくれる。ワイズマン自身この空間をこよなく愛してきた“図書館ヘビーユーザー”だからこそ、最大のリスペクトをこめたある種の「謎解き」が楽しく感じる。

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© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

図書館とは「言論の自由を体現する、民主主義の柱」であるべき

さてこの映画は、アメリカにおける公共図書館のあり方を精査し続け、また時代に即した図書館の未来像をしっかりとイメージしようとしている図書館スタッフの努力を目の当たりにする。「日々の業務は大変だが、目の前の仕事がいかに将来につながり、図書館の未来を作るのか、それを考えながら仕事をしよう」と提案するスタッフ。あるいは、ベストセラーと所蔵すべき作品、限られた予算の中でどちらに比重をかけるのかについて館長が問いかけ、「もしも我々が所蔵しなければ、10年後、それがどこにも見つからないことになる」と危惧する。その言葉の重み、だけどさらりと提示するところにもワイズマンの「粋」が光る。

あるパーティで、ノーベル賞受賞作家のトニ・モリスンの言葉「図書館は民主主義の柱だ」が紹介される。そしてそれはまさにNYPLを表現する。ワイズマンは「そのとおりだと思った。すべての階級、人種、民族が利用できる。アメリカの最も優れた一面の象徴。言論の自由を体現している」とインタビューで述べている。12週間をかけて撮影された濃厚なドキュメンタリー。ワイズマンの真骨頂を十分に堪能しつつ、そこに息づくアメリカのハート、図書館の真髄を貪欲に享受したい。

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© 2017 EX LIBRIS Films LLC – All Rights Reserved

福嶋真砂代★★★★★

information:

518()より岩波ホールほか全国順次ロードショー!

監督・録音・編集・製作:フレデリック・ワイズマン 

原題:Ex Libris - The New York Public Library2017アメリカ|3時間25分|DCP|カラー 

配給:ミモザフィルムズ/ムヴィオラ 

moviola.jp

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』 公開記念パネルディスカッション ニューヨーク公共図書館と<図書館の未来> レポートはこちら

http://moviola.jp/nypl/event.html

 

 関連サイト:

 フレデリック・ワイズマン監督インタビュー(2011)by 松丸亜希子 / 福嶋真砂代

archive.realtokyo.co.jp

 

*1:「パブリック(public)」と入っているが、独立法人であり、財政的基盤は市の出資と民間の寄付によって成り立っている。ここでいうパブリックとは「公立」という意味ではなく、「公共」(一般公衆に対して開かれた)という意味に当たる。(公式サイトより)

Review 35『ワイルドツアー』

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© Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]

RealTokyoに『ワイルドツアー』レビューを寄稿しました。

青春のきらめく瞬間(トキ)をつかまえて」

山口県山口情報芸術センター[YCAM]、磯崎新設計による建物の流線型の屋根の上を若者たちがスイスイ歩き、将来のことなど、たわいない話をしている。雄大な山口の風景を背景に撮られた少しシュールなシーンが印象的だ。「もしかしたら未来社会の姿が山口にあるのではないか」と、自然とテクノロジーの無理のないバランスの中に感じた三宅唱監督。最新作の『ワイルドツアー』は、YCAMが実施する滞在型映画制作プロジェクト「YCAM Film Factory」の第4弾(柴田剛、染谷将太、映像制作集団「空族」の作品に続く)として作られた。「第11回恵比寿映像祭」にて東京で初上映され、このたび劇場公開になった。同映像祭ではiPhone撮影による映画『無言日記2018』の上映や、ビデオインスタレーション「ワールドツアー」の展示も行われ、15日間の期間中に多くの観客が鑑賞した。

『ワイルドツアー』は、「採取した植物のDNAを解析し、植物図鑑をつくる」というYCAMで実際行われているワークショップを題材にして物語が進む。物語の中心にはワークショップファシリテーター役の大学1年生のうめ(伊藤帆乃花)ちゃん、そして中学3年生のタケ(栗林大輔)とシュン(安光隆太郎)、ほかにブルージャケットの男子コンビチーム、パワフルな女子高校生のチームが ・・・・

続きはこちらへ

https://www.realtokyo.co.jp/screening/wild-tour/ 

Review 34 『マイ・ブックショップ』

コイシェ監督が共感した「自分らしさ」貫く女性の生き方

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© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

映画の原作、ペネロピ・フィッツジェラルドの小説「The Bookshop」を読んだイザベル・コイシェ監督は、主人公のフローレンス・グリーンと深いつながりを感じたという。コイシェ自身、真に作りたい映画のために奮闘してきたであろうひとりの女性映画監督として、およそ半世紀前の、書店が一軒もない小さな町に新しい息吹きをもたらすべく起こしたフローレンスの「小さな革命」と、「自分らしさ」を貫く姿勢はとても共感できる、また勇気を得られるものだったのだ。

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© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

舞台は1959年イギリス東部サフォークの小さな海辺の町。戦争未亡人となったフローレンス(エミリー・モーティマー)が、夫との夢だった書店を開く決意をし、志高く、信じる道を静かに進む。まずは長く買い手のつかない“オールドハウス”を買い取り、書店オープンの準備に取り組む。着々と理想の書店に近づくが、保守的な町の考え方や理不尽な嫉妬に遭い、道のりは順風どころか、逆風が吹きあれる。何かといちゃもんをつける町の有力者のガマート夫人(パトリシア・クラークソン)、ガマート夫人のちゃらい甥っ子のマイロ・ノース(ジェームズ・ランス)、書店を手伝う聡明でおませな少女クリスティーン(オナー・ニーフシー)、そしてミステリアスな老紳士ブランディッシュ氏(ビル・ナイ)など個性的な人物が登場し、エッジの効いた本のセレクション*1に絡めて、賑やかにストーリーは進む。数々のいじわるにも健気に耐えるフローレンスだが、当時の問題作「ロリータ」の販売で勝負にでると、それがまたガマート夫人の闘争心に火をつけた。さすがのフローレンスも心が折れそうになったが、そこでナイト(騎士)のごとく現れたのはブランディッシュ氏。果たして彼がとった秘策は……?

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© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

◇サラからエミリーへ、「女性の生命力」描くコイシェ監督

コイシェ作品の圧倒的な魅力は「女性の生命力」に宿るのではないだろうか。絶望的な喪失感の中から、決意とともに立ち上がるしなやかな強さ、奥深さ、美しさと、多様に変容する生命力。例えば『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)では余命を宣告されたアンの、死よりも生に向かうエネルギー。また『あなたになら言える秘密のこと』(2005)のハンナの、心に深い傷を負い、底しれぬ絶望感と癒えようのない傷を乗り越えようとする静かな生命力を見た。いずれも「陰キャラ」が得意なサラ・ポーリーが演じ、コイシェ作品を強く印象付けた。今回のヒロイン、エミリー・モーティマーは陰陽あわせもちながら、『メリーポピンズ リターンズ』での百万ドルの笑顔、『ラースと、その彼女』や『マッチポイント』など、どちらかと言えば無垢な明るさ、おっとりと控えめだが内面から太陽の光を放つように感じるタイプだ。これまでのコイシェ作品と少し違ったトーンの生命力を感じるのは、監督とエミリーのコンビがもたらす化学変化のマジックだろう。

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© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

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© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

◇コイシェファンにはたまらない凝ったディティー

さらにさらに、バルセロナ出身のコイシェが作る世界のディティールウォッチングも楽しみのひとつ。セットであったり、小物であったり、今作も隅々にまで神経が行き届く。50年代の英国の片田舎の風景を、アイルランドバルセロナロケによって再現したリュオレンス・ミケルの美術。常連カメラマンジャン・リロード・ラリューの撮影は海の表情、ヘイジーな雲り空、プンと薫る草の匂いまでも届ける。またフローレンス始めシーンによって変化する人物の心情を表現するメルセ・パロマの衣装も必見。ハイソなガマート夫人のキラキラした部屋にも目を惹かれ、またブランディッシュ氏の古い邸宅でのアフタヌーンティーのスイーツは質がよくておいしそう。さらにアラ・ニの音楽はジャジーな味付けをし、コイシェ組チームワークは完璧だ。蛇足ながら、筆者がバルセロナを旅して感じたのは、スペインでもとりわけアートフルでユニークな街だけど、人々のファッションは意外にも落ち着いた色調のクラシックコンサバだったこと。そんなシックなセンスもこの映画に生かされ、コイシェファンも、初めてコイシェに触れる人も、また本好きな人、書店好きな人にも、じっくり楽しめる充実の作品になっている。

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© 2017 Green Films AIE, Diagonal Televisió SLU, A Contracorriente Films SL, Zephyr Films The Bookshop Ltd.

福嶋真砂代★★★★.5

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39日(土)よりシネスイッチ銀座YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国順次ロードショー

information:

監督&脚本:イザベル・コイシェ 
出演:エミリー・モーティマービル・ナイパトリシア・クラークソン 
原作:「ブックショップ」ペネロピ・フィッツジェラルド著(ハーパーコリンズ・ジャパン*3/1刊行)
2017|イギリス=スペイン=ドイツ|英語|カラー|5.1ch|DCP 原題:The Bookshop 
配給:ココロヲ・動かす・映画社○

mybookshop.jp

 

*1:

・「華氏 451」著:レイ・ブラッドベリ(1953)

・「ロリータ」著:ウラジミール・ナボコフ(1955)

・「ジャマイカの烈風」著:リチャード・ヒューズ(1929)

・「ドンビー父子」著:チャールズ・ディケンズ(1848)

・「火星年代記」著:レイ・ブラッドベリ(1950)

・「たんぽぽのお酒」著:レイ・ブラッドベリ(1957)

Review 33『バハールの涙』

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©2018 – Maneki Films – Wild Bunch – Arches Films – Gapbusters – 20 Steps Productions – RTBF (Télévision belge)

RealTokyoに『バハールの涙』レビューを寄稿しました。

 「ヤズディの女性たちの恐怖と苦痛から目を背けてはならない」

実話に基づいて作られた。イラク北部のヤズディ教徒の女性たちに降りかかった恐怖と苦痛。2014年8月のIS(イスラミックステート)の侵攻により彼らに起きた悲劇は想像を絶する。2018年ノーベル平和賞共同受賞者のナディア・ムラドは自身の恐ろしい体験を語ることで、いまだ安否不明の多くの人々の救済を訴える。ナディアはまさにエヴァ・ウッソン監督が取材した女性たちの代表者であり、“バハール”と言えよう。

砲弾飛び交う紛争の最前線。ISと戦うクルド人部隊の女性兵士バハールと、片眼の戦争記者マチルドが出会うところから映画が始まる。『パターソン』での可憐な美しさが印象的なゴルシフテ・ファラハニが、一転して兵服に身を包む孤高の兵士バハールを演じる。夫と息子と幸せな家庭を築いていた弁護士バハールがクルド人自治区へ家族で里帰りした夜、ISの襲撃を受け、悲劇が始まった。村の成人男性はことごとく殺害され、女性と少女は拉致、あげく性的奴隷として売買され、少年たちはIS戦闘員養成学校へ送られた。バハールも何回も売られ、夫は殺され、息子は行方不明となった……。

続きはこちらへ

www.realtokyo.co.jp

 

2018年 わたしの10大イベント「CINEMA10」

REALTOKYO CINEMAはおかげさまで3年目を迎えました。今年もよろしくお願いいたします。そしてすっかり年頭の恒例行事になった「CINEMA10」の発表です。今回もさまざまなフィールドで活動する6人の旧RealTokyoメンバーが、2018年に観た映画から心に残る10本を厳選しました。激動の1年間を振り返りつつ、平成ラストのCINEMA10を、原稿到着順にお届けします。よい意味でバラバラ、だけど実に味わい深いセレクトではないかと思います。どうぞお楽しみ下さい。

2018 RT CINEMA 10

★澤 隆志の2018 CINEMA10

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© E.x.N K.K.
  1. 『マウンテン・プレイン・マウンテン (恵比寿映像祭)』https://www.yebizo.com/jp/program/detail/2018-04-02
  2. 君の名前で僕を呼んでhttp://cmbyn-movie.jp/
  3. 『フロリダ・プロジェクト』 http://floridaproject.net/
  4. 『外国人よ、出て行け!』 (イメージフォーラム・フェスティバル2018) http://www.imageforumfestival.com/2018/program-s7
  5. 『この素晴らしいケーキ!』 (イメージフォーラム・フェスティバル2018) http://www.imageforumfestival.com/2018/program-k
  6. 『タクシー運転手』http://klockworx-asia.com/taxi-driver/
  7. きみの鳥はうたえるhttp://kiminotori.com/
  8. 僕の帰る場所https://passage-of-life.com/
  9. 『Long Day's Journey into Night ()』https://filmex.jp/2018/program/competition/fc08
  10. 『完璧なドーナツをつくる』https://www.kyunchome.com/donut

コメント:難民ー移民ー国民の解釈と共生があいまいな日本に国内外の様々な「声」が突きつけられた印象が強かった。(4、5、8、10)男と女の間にヴァカンスという性があると言わんばかりの2、外国人と日本人の共同監督でコミュニティに切り込み字幕とセリフの差異まで料理するカタコト映画の1、飯を食うソン・ガンホに萌えつつ光州事件1980年というのも驚愕の6、A24フィーバーの中、子供達の圧倒的な演技と豊かなサントラが突出の3、染谷将太石橋静河、なにより柄本祐のいい声が際立つ7、ケレン味全開の前半、執念の1ショット3Dの後半と威勢のいい9は、中国本土でまさかのデートムービーとか。観客が一番エクスペリメンタル!

 

★前田圭蔵の2018 CINEMA10

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(C)「雨にゆれる女」members
  1. 『雨にゆれる女』http://www.bitters.co.jp/ameyure/
  2. 『ラッキー』https://www.uplink.co.jp/lucky/
  3. 万引き家族https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
  4. あなたはわたしじゃないhttp://keishichiri.com/jp/events/anatawatashi/
  5. 『Don't Blink ロバート・フランクの写した時代』http://robertfrank-movie.jp/
  6. 顔たち、ところどころhttps://www.uplink.co.jp/kaotachi/
  7. ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ アディオス』https://gaga.ne.jp/buenavista-adios/
  8. 『嘘をつく男』http://www.zaziefilms.com/arg2018/index.html
  9. 『生きてるだけで、愛』http://ikiai.jp/
  10. ボヘミアン・ラプソディhttp://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/

コメント:映画を見るのが大好きなのに、こうして振り返ってみると、昨年は全然映画館に通えなかった。特に、アジア各国の監督の映画は、見逃した作品がたくさんある。月並みかも知れぬが、高校の先輩でもある是枝裕和監督のカンヌ受賞作は、監督の一貫した眼差しが結実したほんとうに良い作品だった。細野晴臣の音楽も出色だった。文科相祝意を「公権力とは距離を保ちたい」と辞退した是枝氏の姿も印象的だった。貧富の差の拡大や、#MeToo運動などに象徴される社会における様々な「不理解」と「分断」の構図。「世界」はひとつであるのに「社会」は決してひとつなんかではないという現実とどう向き合うか。そんな問い掛けを胸に秘めつつ、今年こそはもっと映画を見ようと誓うのである。

 

★松丸亜希子の2018 CINEMA10

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©Laboratory X, Inc
  1. 『港町』http://minatomachi-film.com/
  2. 友罪https://gaga.ne.jp/yuzai/
  3. 万引き家族https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
  4. ザ・スクエア 思いやりの聖域http://www.transformer.co.jp/m/thesquare/
  5. 『それから』http://crest-inter.co.jp/sorekara/
  6. 海を駆けるhttp://umikake.jp/
  7. 寝ても覚めてもhttp://netemosametemo.jp/
  8. 『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』http://child-film.com/jackson/
  9. 『生きてるだけで、愛。』http://ikiai.jp/
  10. 『ハード・コア』http://hardcore-movie.jp/

コメント:新潟県長岡市に移住して5年目に突入。かつて通い詰めていた試写や映画祭への未練も薄れつつあり、市内唯一のシネコンと県内2軒のミニシアターをはしごして、ちびちびと、じっくりと映画を味わっています。この10本は劇場で観た順で、観賞本数は少ないながらも2018年もたくさんの傑作と出会うことができました。想田監督との新潟での再会という僥倖にも感謝。動画配信で手軽に映画見放題の時代だからこそ、今年も劇場に足を運ぶことを諦めずにいたい。そう胸に刻み、毎年恒例のCINEMA10に参加できる喜びを噛み締めています。

 

★白坂由里の2018 CINEMA10

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(C)2017 Florida Project 2016, LLC.
  1. 僕の帰る場所https://passage-of-life.com/
  2. 『フロリダ・プロジェクト』http://floridaproject.net/
  3. ワンダーストラックhttp://wonderstruck-movie.jp/
  4. 正しい日 間違えた日http://crest-inter.co.jp/tadashiihi/
  5. きみの鳥はうたえるhttp://kiminotori.com/
  6. デトロイトhttp://www.longride.jp/detroit/
  7. 『スリービルボードhttp://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/
  8. 『マイ・フォークス・イン・ジェイド・シティ』/『リターン・トゥ・ビルマ』(恵比寿映像祭2018)https://www.yebizo.com/jp/program/detail/2018-04-04
  9. 『With Friction, As Friction』(イメージフォーラム・フェスティバル2018)http://sanaeyamada.com/WithFrictionAsFriction.html
  10. 『ZEN FOR NOTHING〜何でもない禅』http://silentvoice.or.jp/works/zenfornothing/

コメント:1.2.3は移民や貧困、ままならぬ身体や現状を抱えた子どもたちが、友達と駆け出す姿に。どんな場所にもある笑いや遊び、悲しみで掠れた言葉。その対比を色彩や光と影で表す。3はミュージアムが“居場所”になる。4.5は“今”に率直で、または“今”を見送り、傷つき、修復する大人たちに。6は容赦なく理不尽だが、歌に救いあり。7は瀕死から寝返る“チキチータ”警官に希望が。8はミャンマーの労働者を描くミディ・ジーの視線が優しい。カラオケシーンがそのまま映画音楽になる。9は新潟県十日町市松之山の雪ほり(雪下ろし)を撮影した山田沙奈恵の映像。骨が折れるが、自然とともにある労働。雪の音。雪面に反射する光。10は「みちのおくの芸術祭」で旅ごと体感。

 

 ★フジカワPAPA-Qの2018 CINEMA10

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(C)BUSHBRANCH FILMS LTD 2017
  1. 『ラスト・ワルツ』https://lastwaltz.net-broadway.com/
  2. 『ラジオ・コバニ』https://www.uplink.co.jp/kobani/
  3. ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオスhttps://gaga.ne.jp/buenavista-adios/
  4. オーケストラ・クラスhttp://www.orchestra-class.com/
  5. 『テル ミー ライズ』http://tellmelies.jp/
  6. ペギー・グッゲンハイム  アートに恋した大富豪』http://peggy.love/
  7. 『華氏119https://gaga.ne.jp/kashi119/
  8. エリック・クラプトン 12小節の人生』http://ericclaptonmovie.jp/
  9. ピアソラ 永遠のリベルタンゴhttps://piazzolla-movie.jp/
  10. 『私は、マリア・カラスhttps://gaga.ne.jp/maria-callas/

 コメント:1:公開40周年記念デジタルリマスター版。爆音で! 2:ラジオのスタジオでのウードの演奏は希望の音だ。 3:続編にして最終作。ベテランから若手へ音楽継承。 4:監督と同じパリの移民の少年少女が演奏会を目指してバイオリンを学ぶ。音楽への信頼が素敵。 5: 1967年制作のベトナム反戦映画。本邦初公開!?  6:ヒップな富豪女性が様々な美術家をNY、パリ等で援助する痛快譚。  7:米国や世界の状況を見て多彩な人々が発言し行動する。赤いバンダナはイカす! 8:幼少期~現在までの音楽人生を大胆に描く。 9:ピアソラの実の息子の視点で父親の生涯を描く。 10:マリアとカラスの相克を本人が深く語る。歌が切なくて涙。(リストは公開順)

 

 ★福嶋真砂代の2018 CINEMA10

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(C)2017 MLD Films / NOBO LLC / SHELLAC SUD
  1. ライオンは今夜死ぬhttp://www.bitters.co.jp/lion/
  2. 『港町』/『ザ・ビッグハウス』http://minatomachi-film.com/> http://thebighouse-movie.com/
  3. 友罪https://gaga.ne.jp/yuzai/
  4. きみの鳥はうたえるhttp://kiminotori.com/
  5. ゲンボとタシの夢見るブータンhttps://www.gembototashi.com/
  6. 『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』http://child-film.com/jackson/
  7. 泳ぎすぎた夜http://oyogisugitayoru.com/
  8. ガザの美容室https://www.uplink.co.jp/gaza/
  9. ポルトの恋人たち 時の記憶』http://porto-koibitotachi.com
  10. 『オンネリとアンネリのふゆ』https://www.onnelianneli.com/

コメント:諏訪敦彦とジャン=ピエール・レオーの実験的南仏ランデブー(1)。神秘的なモノクロ映像で観察を超えた前者と後者のアメリカ社会システムの痛快観察の対比(2)。瑛太はどこまで怪演を極めるのか!(3)。三宅唱の作る佐藤泰志の新しい世界観(4)。“幸福な国”の現実を兄妹を通して見せてくれた若い才能たち(5)。ワイズマン、ワイズマン!(6)。雪景色と少年の完璧な構図(7)。ガザ日常のリアル体験(8)。ポルトガルギマランイスと柄本&中野との驚きの親和性(9)。フィンランド児童文学の最高の映像化(10)。(付録)TIFFとFILMeXは豊作。個人的グランプリはそれぞれ『三人の夫』、『自由行』でした。(リストは順不同)

 

●選者プロフィール:

archive.realtokyo.co.jp

 過去の「CINEMA10」

realtokyocinema.hatenadiary.com

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