REALTOKYO CINEMA

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Review 017 映画『untitled』at 「めぐりあいJAXA」

ムーンダイバー 〜Walking in the Seabed〜

「めぐりあいJAXA」非演出的衛星画像観望会

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地球観測衛星「だいち」が地球を眺める、その眼を感じる実験映画

春の気配が近づいてきた2月25日、満員のせんがわ劇場で行われた「めぐりあいJAXA」で上映されたuntitled映画(あえて映画と呼んでみる)をみた体験を振り返る。あれはもしかしたらオーディエンスを巻き込んだひとつの大きな映画実験場だったのかもしれないとも思う。企画者の 澤 隆志さんが「観望しましょう」と呼び掛け、約30分間、地球をただただ静かに眺め渡す「地球観望会」がはじまった。音も音楽もない完全な静寂の中でオーディエンスはそれぞれ、大きなスクリーンに映された映像作家五島一浩さんによる地球映像をじっと見つめる。「あ、これはどこの上空? 日本? 外国? 川? 海? 波? 山? 雲? また雲?」そう自分に問いつつだいちと一緒に浮遊する、だんだん内側に潜り込む内観さえ始まるような時間になっていたかもしれない。なんだか禅の世界のような、はたまたマインドフルネスっぽいような、不思議な広がりを持つ時間と空間を共有してた。その昔、リュミエール兄弟が定点観測+長回しによってこの世界のいつもの営みをフレームのなかに捉えて、外の世界を「映画」として映したとすれば、日本の地球観測衛星「だいち」の巨大精密カメラは、地球の毎日の営みをじーっと定点観測し(というか1日14〜15回も地球を周って撮ってる)深い内なる世界を覗かせてくれるのかもしれない。そうやってだいちが地球に律儀に送り続ける途方もないデータ量、さらにそれらを受け取り日夜解析分析する人々の仕事をリスペクトしながら、その果実を研究者や科学者の独占物としないで、もっともっとありがたく感受する、そんな機会があってもいいのではないか。それはアートの世界ともっと融合してもいいのではないか。そんなことも思いつつ体験した「だいちの仕事を愛でる会」、はたまた「だいちの気持ちになる会」とも言える観望体験。「宇宙」といえばつい見上げるものだと思っているけど、こうやって「地球を見下ろす」こともまた宇宙なんだと、まだ生まれたばかりでよくわからないけど、宇宙利用のまったく新しい領域を発見、認識したようにも思う。

あとで教えてもらったところによると、我々が映画で旅したのはドイツ、バングラデシュ八郎潟と北海道の知床(尾岱沼)、大西洋アルゼンチン沖とわかりました。上映前になんの解説も与えられなかったのは、できるだけフリーに衛星画像の迫力を感じてもらうという意図が隠れているとか。その贅沢な心地よさを知ってしまったのでした。

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