2016年10月11日にスタートしたREALTOKYO CINEMAは、おかげさまで2年目に突入しました。さて遅まきながら、2017年に観た映画の中で印象に残る10本を選ぶ第2回「CINEMA10」を発表いたします。今年もそれぞれの場所で活躍するREALTOKYOゆかりのライターたち(澤 隆志、松丸亜希子、フジカワPAPA-Q、白坂ゆり、福嶋真砂代)がいろいろあった2017年を振り返りつつ、10本(あるいは6本)を厳選してくれました。個性滲み出るバラエティに富んだチョイスをお楽しみ下さい。(「+」として澤隆志スペシャル「展覧会とかpickup10」も掲載しました。)2018年も相変わらずREALTOKYO CINEMAをよろしくお願いいたします。
2017 RT CINEMA 10
★澤 隆志の2017 CINEMA10
- 『雲の伯爵――富士山と向き合う阿部正直』 http://www.intermediatheque.jp/ja/schedule/view/id/IMT0108
- 『ドーソンシティ』 @イメージフォーラム・フェスティバル』http://www.imageforumfestival.com/2017/program_a
- 『メッセージ』http://www.bd-dvd.sonypictures.jp/arrival/
- 『あさがくるまえに』https://www.reallylikefilms.com/asakuru
- 『ジャッキー』http://jackie-movie.jp/
- 『禅と骨』 http://www.transformer.co.jp/m/zenandbones/
- 『ELLE エル』http://gaga.ne.jp/elle
- 『グットランド』 @TIFF http://2017.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=11
- 『立ち去った女』 http://www.magichour.co.jp/thewoman/
- 『私の死の物語』@アルベルト・セラ監督特集 http://www.athenee.net/culturalcenter/program/se/serras.html
コメント:3はコレオグラフィーとカリグラフィーの幸福な関係。他言語との出会いゆえ「バベルの塔」展と共に。東京は編集次第で勝手芸術祭ができるから!手元に「虫の本」あれば完璧。2は金鉱跡を掘ったら記憶がARRIVALした話。1は不定形な雲の実態をつかむべくアニメや3Dで挑む数奇者。6も映画に憑かれた者である。7、8、10は顔の映画。ユペールのキョトン顔は狂気の新しい引き出し。白塗りのカリギュラはもうバカ殿様でしかないが素晴らしい。暗殺された大統領の葬儀という史上最難関”段取り”映画の5。親切と副業を武器にしたおかんノワールな9。恋人の親密なベッドから冷たい手術台への臓器と記憶の旅4は僕の退院直後でショック大!
(3の参考リンク
★松丸亜希子の2017 CINEMA10
- 『愚行録』http://gukoroku.jp/
- 『わたしは、ダニエル・ブレイク』http://www.longride.jp/danielblake/
- 『T2 トレインスポッティング』http://www.bd-dvd.sonypictures.jp/t2trainspotting/
- 『美しい星』http://gaga.ne.jp/hoshi/
- 『三度目の殺人』http://gaga.ne.jp/sandome/
- 『散歩する侵略者』http://sanpo-movie.jp
- 『残像』http://zanzou-movie.com
- 『パターソン』http://paterson-movie.com
- 『ビジランテ』https://vigilante-movie.com/
- 『希望のかなた』http://kibou-film.com
コメント:新潟県に移住し、観られる作品の本数は激減しましたが、縁があって出合えた1本1本が貴重でありがたく、丁寧に、じっくり観るようになりました。大好きな監督たちの新作が劇場で観られる喜びもひとしお。たとえ短期間でも、上映回数が少なくても、地方に巡る映画が増えますように!
★白坂ゆりの2017 CINEMA6
- 『パターソン』http://paterson-movie.com/
- 『リュミエール!』http://gaga.ne.jp/lumiere!/
- 『希望のかなた』http://kibou-film.com/
- 『ビジランテ』https://vigilante-movie.com/index.php
- 『残されし大地』https://www.facebook.com/nokosareshidaichi/
- 『Playback』http://www.playback-movie.com/
コメント:1と2は日常のなかのささやかな発見力。それは生きる動力にもなる。4は、けれどそのような視点を持てない人たちのほうが、わたしの住む地方都市では実感に近いので、三郎ちゃんにわずかな希望を見るのです。3と4には、移民や権力の問題など「排他性」への問いがあり、どちらに転ぶか、コインの裏表のようにも見えた。5は福島第一原子力発電所から12キロ離れた福島県双葉郡富岡町のドキュメンタリー。荒涼とした環境のなか、それでも自然の息づかい、家族の談笑があることがリアル。それが抵抗だ。6は三宅唱監督の2012年作だが、水戸のCinema Voiceでのトークショー映像を見て、ユーロスペースでの再映で初鑑賞。国道など、絵にならないようで絵になる風景。再生と記憶。スケボーシーンの音が巻き直しの合図のようで耳に残る。
★フジカワPAPA-Qの2017 CINEMA10
- 『Don't Blink ロバート・フランクの写した時代 』http://robertfrank-movie.jp/
- 『めだまろん ザ・レジデンツ・ムービー』http://www.imageforum.co.jp/theresidentsmovie/
- 『約束の地、メンフィス テイク・ミー・トゥ・ザ・リバー』http://www.curiouscope.jp/Memphissoul/
- 『バレエ・リュス パリ・オペラ座』https://www.culture-ville.jp/balletrussestheaterticket
- 『ドリーム』http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
- 『永遠のジャンゴ』http://www.eien-django.com/
- 『わたしは、フェリシテ(幸福)』http://www.moviola.jp/felicite/
- 『私が殺したリー・モーガン』http://icalledhimmorgan.jp/
- 『ダンシング・ベートーヴェン』http://www.synca.jp/db/
- 『オール・アイズ・オン・ミー』http://alleyezonme.jp/
(公開順)
コメント:音楽関連映画公開順10本。1)著名な音楽プロデューサー、ハル・ウィルナーが音楽を担当し、ボブ・ディラン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、パティ・スミス等の曲が流れる。その時代時代に流れ、フランクも聞いていただろう。2)1966年結成の謎のアヴァンギャルド・ロックバンド、ザ・レジデンツの歴史と活動を追う。トップハット&目玉マスク&タキシード姿で知られているが、昨春の32年ぶりの来日公演では全然違う新たな格好で謎が増えた? 3)原題「Take Me To The River」はトーキング・ヘッズもカバーした、メンフィス・ソウルの貴公子アル・グリーンの名曲。1960~70年代に最高の音楽を発信したテネシー州、メンフィスに伝説的な音楽家が集まり、ソウル、ブルースのセッションを収録。ブッカー・T、オーティス・クレイ、ボビー・ブランド等が若手とコラボする場面は感動的。サントラ盤必聴。4)バレエ・リュス誕生100周年の、2009年のパリ・オペラ座での公演を収録。主宰者ディアギレフ(1872~1929)の生誕145年の昨年、特別に公開。『牧神の午後』(初演1912年。音楽ドビュッシー、振付ニジンスキー)、『ペトルーシュカ』(初演1911年。音楽ストラヴィンスキー、振付フォーキン)等4作品。他の作品も見たい。5)原題は「Hidden Figures」で、1962年、NASAで働く黒人女性数学者達の知られざる存在を明らかにした痛快作。人気プロデューサー、ファレル・ウィリアムズ担当のサントラ盤にはレイラ・ハサウェイ、アリシア・キーズ等著名女性歌手が参加。主役の一人、ジャネル・モネイも歌う。6)1943年、ナチス占領下のパリ。マヌーシュ・スウィングのギター奏者、ジャンゴ・ラインハルト(1910~1953)は音楽活動をしていたが、ナチスと仏当局の圧迫が激しくなり…。ナチスが虐殺したのはユダヤ人だけでなく、ジプシー、身体障害者等も…、という歴史を人類は忘れるな。ローゼンバーグ・トリオ演奏のサントラ盤は素晴らしい。7)中部アフリカ、コンゴ民主共和国の首都キンシャサ。「幸福」という名前のフェリシテは毎晩バーで歌っているが、一人息子の事故で彼女の運命が変わる…。映画に出演の、電化親指ピアノをフィーチャーするバンド、カサイ・オールスターズによるサントラ盤も強烈。8)1972年2月深夜のマンハッタンのジャズクラブで、著名ジャズ・トランペット奏者リー・モーガン(1938~72)射殺という悲劇が起きた(享年33)。犯人の内縁の妻ヘレンが残したインタビューを元に、同僚ミュージシャン(ウェイン・ショーター等)の証言を加えて事件に迫る。9)モーリス・ベジャール(1927~2007)が振付けたベートーヴェンの「第九」(初演1964年)の、2014年に行われたベジャール・バレエ団と東京バレエ団による公演を追う。演奏はズービン・メータ指揮、イスラエル・フィル。「第九」のテーマを巡るベジャールとジャン・ジュネの会話の逸話が面白い。10)ラッパーの2パック(本名トゥパック・アマル・シャクール。1971~1996)は、ブラック・パンサー党員の両親のもとNYハーレムで生まれた。ラスベガスで何者かの銃撃で倒れる迄の音楽ビジネスでの活動を描く(享年25。犯人は未だ不明)。ケンドリック・ラマー、エミネム等多くに影響力大。
★福嶋真砂代の2017 CINEMA10
- 『息の跡』http://ikinoato.com/
- 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』http://www.bitters.co.jp/manchesterbythesea/aboutthemovie.html
- 『午後8時の訪問者』http://www.bitters.co.jp/pm8/
- 『残像』http://robertfrank-movie.jp/
- 『Don't Blink ロバート・フランクの写した時代 』http://robertfrank-movie.jp/
- 『三度目の殺人』http://gaga.ne.jp/sandome/
- 『散歩する侵略者』http://sanpo-movie.jp/
- 『婚約者の恋人』http://frantz-movie.com/
- 『ミューズ・アカデミー』http://mermaidfilms.co.jp/muse/
- 『勝手にふるえてろ!』http://furuetero-movie.com
コメント:1は小森監督の鋭くも素朴で温かい視線と根性。たね屋さんはお元気かな。2はストーリーテリングが秀逸。3はダルデンヌ兄弟がとうとう先進機器に親和性を示した記念すべき1本。5はクールな編集、インタビューしたNYのイスラエル監督もクールだった。ロバート・フランク最高! 6、7は大好きな二人の期待を裏切らないおもしろさ。8はオゾンの深みを見直した(←何様)。9はすべてが文句なくダントツ好み。TIFFで10に出会い、引力の強さに”勝手にふるえ”ました。他にも『海辺の生と死』、『ドリーム』、『リュミエール!』、『禅と骨』、東京フィルメックスの『天使は白をまとう』と『ジョニーは行方不明』に揺り動かされた。見逃して悔しい作品も多々。心癒す作品に惹かれた1年だった。
●澤隆志スペシャル:
★澤 隆志 2017 展覧会とかpickup10
- 山崎博展 https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2574.html
- アピチャッポン・ウィーラセタクン フィーバー・ルーム https://www.tpam.or.jp/2017/?program=fever-room
- street matters のEveryday Holiday Squad http://blockhouse.jp/index.php?itemid=165
- 片岡純也 / 岩竹 理恵 http://the-container.com
- 須藤由希子 / 一戸建て展 http://www.takeninagawa.com/
- 千葉正也 思い出をどうするかについて、ライトボックス⾵間接照明、⼋つ裂き光輪、キスしたい気持ち、 家族の物語、相模川ストーンバーガー、わすれてメデューサ、50m先の要素などを⽤いて http://shugoarts.com/news/2951/
- コンサベーション_ピース ここからむこうへ part A 青野文昭展 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2017/06/-part-a.html
- 単色のリズム 韓国の抽象 http://www.operacity.jp/ag/exh202/
- 杉戸洋 とんぼとのりしろ http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_hiroshisugito.html
- 吉開菜央個展 呼吸する部屋 http://aikowadagallery.com/ja/aikowadagallery/exhibition/2017/YOSHIGAI/
●選者プロフィール: