A journey with children for thinking about the future
Director Mike Mills says he was inspired to write the script for this film while giving his child a bath, and as one might expect, a bubble-like softness (and a slight sense of fragility) pervades its entire length. After examining his relationship with his father in “Beginners” and that with his mother in “20th Century Women,” Mills turns his attention to children and the future in this imaginative and intimate work.
筆者の感想を正直に話すと、本作を初めて観た後、喉には小骨がひっかかったような、何か腑に落ちない感触が残った。その内訳をおおまかに分析すると、まず映画の基本的なシチュエーションについて、この社員旅行そのものが不思議に思えた。なぜなら参加者はそれほど打ち解けたメンバー構成ではなく、その状況で女性にとって極めてセンシティブなセクハラ問題を話し合うことの危険性。最も精神的にダメージを受けている時期に旅行に参加することさえ苦しいだろう。さらには参加者の中にいる取材者のようなカメラマンの存在。折々に挿入される波とサーファーの海辺の風景。牧歌的なピアノ曲による場面展開(まるでホン・サンス映画を想起させるようだ)によってますます謎めき考えこんだ......、言い換えればそれほどまでに映画に嵌まり込んでしまっていた。さてインタビューで、舩橋監督は小骨をそっと抜くように、丁寧に謎に答え、また謎を残してくれた。しかし謎解きされなかった部分にこそ、映画の愉しみがあるように思う。舩橋監督が吉田喜重監督と対談をした著書「まだ見ぬ映画言語に向けて」(作品社)は謎解きヒントの宝庫である。映画の森に迷い込み、そこに息づく樹木、木の年輪、枝の様相、葉っぱの葉脈までも鮮明に見えてくるような、ふたりの名監督の映画話に読み耽る。『道頓堀よ、泣かせてくれ!DOCUMENTARY of NMB48』(2015)に触れた章のなかに、舩橋が温めていたという今回のテーマ「ジェンダーの不平等」についての記述がある。日本の未成熟な社会について鋭く的確なまなざしを向けている。
コメント:1が元旦から公開スタートしたことが象徴的な2021年のほぼ見た順。「My body is my story」とは8の引用だが今年の10作全てに通底する。1も4も「家」に食われそうになる女の抵抗。3、7、10は学校や工場といった男コミュニティでの女の抵抗を描く! 国民—移民-難民の線引きを依然ほったらかしにしている我が国の齟齬について、2はワイズマンのドキュメンタリーの様でいて実は周到なドラマ作品、6は北野武「キッズ・リターン」然とした青春映画に映るが紛うことなきドキュメンタリー。両者の突きつける現実は、今も未解決で、とても痛い。 身体の先天的、後天的変調を描く作品。5は目の見えない白鳥さんに付き添って監督などが対話型鑑賞をする。僕の見た回は視覚障害者向けコメンタリー付き上映。劇中の個人的な関係性の上での作品描写と、コメンタリー上の客観的描写。二者の微妙な差異がとても面白い。9は、認知症患者の迫真の演技を描くのではなく、編集のトリックを用いて映画的に認知症の世界認識を仮想体験させるという逆転が効奏している。 他者や制度の管理下にあるMy body を奪還する作品に惹かれた年であった。