REALTOKYO CINEMA

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Report 08-2『天使は白をまとう』(東京フィルメックス2017、特別招待作品)

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@22 HOURS FILMS

第18回東京フィルメックス2017/11/1826)の中でもゾクゾクが止まらなかった作品。この映画に出会えてつくづくよかったと思ったことを記憶している。中国南部の海辺の町。リゾートっぽい風景だが、どこか寒々と寂れたロケーション。砂浜に忽然と品のないマリリンモンローの巨大な像が立っている。それもとても場違いな居心地の悪さがある。近くには白いウェディングドレスをまとった花嫁花婿が写真撮影をする。海の音、虫の音が印象的だ。それらが聞こえるほどの静寂がある。家出したふたりの少女が登場する。少女があるえげつない事件を目撃したところから物語が展開する。大人たちの汚れた世界と少女たちの汚れない世界。品のないマリリンモンロー像は、その中間に立つのだろうか。像そのものには罪はないはずだが、その目的、いかがわしいチラシを貼り付けられ、次第に汚れた像になっていく。像の足のアップも印象に残る。モーテル(ラブホテル)を舞台としながら、映画自体には謎の品の良さがある。そこにヴィヴィアン・チュウ監督のセンシティビティがある。色の少なさもセンスの良さを感じさせる。白っぽくぼやけた画面にさらに映える白があるとしたら、本物の純白でなければならない。本物のピュアネス、そんなものがあるのだろうか。少女たちの、ほんの一瞬のピュアネスをこの映画は鋭く求め、それを得られたかどうか、どうだろう? 毎月おなかが痛いときにのむ薬のこと、金髪のウィグをかぶるミア、ミアの緑色のポロシャツ、金魚鉢を抱えて寝るミア、数々の美しいシーンが目に焼き付けられる。ヒロインのウェン・チー、美術、音楽も優れていた。儚さと寂しさの表現がうまく、敏腕プロデューサとして活躍するチュウの監督としての才能に慄いた。

インフォメーション(公式サイトより):

『天使は白をまとう』Angels Wear White / 嘉年華

中国 / 2017 / 107分 / 監督:ヴィヴィアン・チュウ(Vivian QU)

●ストーリー

中国南部の小さな町。モーテルのフロントで夜勤していたミアは、中年男が二人の幼い少女たちと宿泊するのを目撃する。やがて少女たちが性的暴行を受けたことがわかり、警察が捜査を始めるが、巻き込まれることを恐れたモーテルのオーナーの意向を受け、ミアは何も見ていないと証言する。だが、今の境遇から抜け出すために金を必要としていたミアは、ある行動に出ようとする......。マリリンモンローの巨大な像が立つリゾート地を舞台に、綿密に構成された様々な女性たちのドラマ。中国インディペンデント映画の名作をプロデュースしてきたヴィヴィアン・チュウの監督としての非凡さが発揮された作品。ヴェネチア映画祭コンペティションで上映。

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