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REALTOKYO CINEMA

リアルトウキョウシネマです。映画に関するインタビュー、レポート、作品レビュー等をお届けします。

Review 014『海は燃えている イタリア最南端の小さな島』

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監督:ジャンフランコ・ロージ
2016年/イタリア=フランス/114分
配給:ビターズ・エンド
2017年2月11(土・祝)ロードショー

難民が上陸するイタリアの小さな島の日常を見つめる冷静な視線

イタリア最南端のランペドゥーサ島で起きている難民問題を捉えるドキュメンタリー。それにしてもこうやっていま難民問題を描くことをタイムリーと呼ぶにはあまりにも問題は長期化、深刻化するばかりだ。イギリスのEU離脱決定によって大きく揺れ動く難民受け入れと、もっと深刻なのは難民を生み出す中東、アフリカの政治不安と紛争の複雑化。しかしそれらを解決せずには難民・移民問題はまったく前進しない。では彼らが到着する最前線の島の様子はどうか。それまで平和に平穏な日常が流れていた地域に難民が押し寄せることでめちゃくちゃになっているのだろうか。ジャンフランコ・ロージ監督はランペドゥーサ島に移り住み、この映画を撮った。移り住んだ理由は、「緊急事態が生じた時のみ島に取材に押し寄せるメディアの習慣を超えることが必要だった」、それによって「移民・難民の波の真のリズムを知った」とインタビューで語っている。同時に「緊急事態」という言葉が無意味であることも、なぜなら「毎日が緊急事態だから」と。「悲劇を本当に感じ取るためには近くにいるだけではダメで、常に隣接している必要がある」という考えのもとに移り住んだ。ここがこの映画の肝なのだと思う。短期間、撮影するためだけに滞在したとしても「お客様」に過ぎない撮影クルーが撮れるものは、表面的、イベント的に限られてしまう。本当の日常とそこに起きていることを捉えるためには住人と一緒に時を共有し、冬を越さなければならない。それをロージ監督は実行した、あえて言えば撮影者が「当事者」に近くなる異質なドキュメンタリーである。

島に住む12歳の少年サムエレくんの日常は島の自然のなかで遊び、おおらかに過ぎていく。キッチンに流れる島ののどかなラジオから船が遭難したというニュースが流れる。しかし日常は大きく変わることなく過ぎていく。一方、遭難した船の状況に場面が移り、女性や子供が乗船し、ぎっしりいっぱいの難民が上陸する。そんな毎日だ。そのふたつのロケーションに接点はない。ずっとこのまま平行線にストーリーは進む。ドキュメンタリーだが、編集の仕方によりまるでフィクションのように”ストーリー”を感じる。いったいこのふたつの世界が出会うことがあるのだろうか。つまりサムエレくんは島に到着する難民の現実に触れることがあるのだろうか。島でたったひとりのピエトロ・パルトロ医師だけが、その両側にいる。サムエレくんの眼の治療もするし、難民上陸の立会い医師でもあり、難民の様々な困難な状況を目にする......。この淡々とした描き方、ことさら感情的にならず、冷静にこの世界を見守るロージ監督の目を感じる。いま世界は好むと好まないに関わらず、こうなっている。

話はちょっと逸れるが、エルマンノ・オルミ監督の『楽園からの旅人』(2011制作、2013日本公開)では、取り壊されることになった教会堂にアフリカ系の不法移民が救いをもとめて訪れ、段ボールの住居を作って住み着くが、時が来ると次の場所へと旅する(せざるをえない)「通り過ぎていく」人々の様を静かに描いていた。特に場所の特定はないが、おそらくこちらもランペドゥーサ島を舞台にしていたのではないか。そこでも教会の司祭でもないと、不法移民と接することがない。オルミ監督の最後の作品(正確には最後から2番目)でも、やはり、見下ろすというのではなく、冷静で落ち着いた「神の目」を感じたのを思い出した。

福嶋真砂代★★★★

www.bitters.co.jp

入賞・ノミネート

第66回ベルリン国際映画祭 金熊賞(グランプリ)、エキュメニカル審査員賞、アムネスティ・インターナショナル賞、ベルリーナー・モルゲンポスト紙読者審査員賞受賞
本年度アカデミー賞外国語映画賞イタリア代表

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