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Report 003 『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ティム・バートン監督会見と双子の秘密

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日本版”奇妙な双子”のかわいらしさにティム・バートン監督もめろめろ

まさにおもちゃ箱をひっくり返したようなファンタジックな世界観を可視化する天才監督ティム・バートンが、最新作『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』の公開に向けて来日した。特異な能力を持つこどもたちが住む孤島を舞台にしたランサム・リグズの長編デビュー小説「ハヤブサが守る家」を原作にバートンの魔法をかけて、「みんな違っていていい」「ありのままの自分を受け入れる」というやさしいメッセージが流れるスリリングなワンダーワールドを作り上げた。宙に浮く少女、後頭部の口でワイルドに食事する少女、体の中に蜂を飼う少年、指先から火を放つ少女に怪力少女と、個性的なこどもたちの登場シーンは楽しくて仕方ないが、ひときわ筆者の目を引いたのは無口な双子。白いソフトな素材の上下服を着て白の仮面で顔を隠す、この双子から目が離せなくなった。双子は何やら凶暴そうな性質を持っているような持っていないような、何も能力を露わさないところも魅力的。双子のキャラクターの誕生秘話をぜひ監督に聞いてみたいところだったが残念ながら聞けず、うずうずしていた時にはこの会見場にまさかその双子がスタンバイしていたとは知らなかった。特に双子に関する記者からの質問もなく会見が過ぎ、最後にMCが「双子が怖かったですね」とさりげなくメンションしたのみ。すると監督は「双子はカワイイと同時に怖しい」と双子についての見解を語ってくれました。その直後に松井愛莉さんと一緒に登場したのは生(ナマ)の双子たち。仮面を脱ぐと最近人気急上昇の「りんか&あんな」ちゃんだった。しかしこの子たちの動きの「奇妙さ」はなんともこの映画にぴったり。カメラや多くの記者に囲まれても物怖じせずに、(まるで映画の双子のように)クマのぬいぐるみで遊びながらマイペースに楽しんでいる。クマで顔が隠れてしまうのでクマを下げてとカメラマンから指示が出て、松井さんに優しく促されてもクマは常に顔の前に。なんともキュートな双子に、ティム・バートン監督もすっかり目を細めパパの顔になっていました。(のちにTBS「王様のブランチ」ではおそらく古い写真コレクターのリグズの物と思われる双子の写真が紹介されていた。)双子の感想になってしまいましたが、記者会見の模様も以下掲載します。原作者のランサム・リグズのプロフィールを見ると映像制作出身の小説家ということで、フィルムメーカーでもある彼とバートンが協働で映画化したという話もうなずける。

Q:原作に書かれたキャラクターを視覚化する難しさは?

映画化する際にいくつかの変更を加えました。例えば、エマという女の子は原作では火を扱う超能力を持つ女の子だったのですが、僕は「宙に浮いている女の子」に詩的で美しいイメージがあって、それでエマを宙に浮くことができる女の子に変更しました。そうは言っても全体的には原作の精神をしっかり保つことを大事にしました。

Q:沈没船が浮上するシーンが美しかったです。またエマには原作にはない「空気を操る能力」を持たせたことで物語が大きく変化します。これは監督のアイディアですか?

もちろん本を読むという体験と映画を観るという視覚的な体験は違うものです。謎めいた部分、詩的な部分、美しさを表現することで、幸いにも原作者のリグズさんと協力して共同で映画を作ることができました。船のシーンは原作にあるものですが、リグズさんは古い写真に着想を得て作品作りをしている方です。静止画で捉えられていることを映像で伝えることは自分にとっては大きなチャレンジでしたが、もともと原作が持っている詩のような美しさを損なわずに表現することに力を尽くしました。

Q:ミス・ペレグリンは時間を操る能力のある女性でしたが、監督が時間を操れるとしたらどの時間に戻りたいですか。

僕自身は時間の管理がとても苦手な人間なんです。だから今日は何日かとか聞かないで下さい。そんな私がこのように時間を扱う映画を作ることは、僕をよく知る友人からも愉快に思われるくらい苦手なことなんですが、時を戻したり未来へ行くということより、いま現在を精一杯生きること、日々、目一杯いい形で過ごしたいと思っています。

Q:この映画はタイムリープをモチーフにしていますが、これまでのタイムトラベルやタイムリープの映画はたくさん作られていて、日本でも最近は時間をモチーフにした映画が注目されています。このような映画を監督はどのように分析していますか。

タイムリープ映画が作られていることは興味深く、意識はしてはいますが、僕は技術的な側面よりも感情面で作品を見ているので、たとえばこの作品では囚われたこどもたちを守るためにそういうモチーフを使っています。あまり技術的な解析とかに頼らずに描いています。

Q:奇妙でかわいらしいこどもたちが登場しますが、こどもたちと仕事をした感想は?

こどもたちの中には演技未経験者もいましたので、僕にとっては新しい経験になりました。実物の建物やセットで撮影したり、あまりCGIに頼らずに、環境を作ってこどもたちに演技をしてもらうことで、経験のなかで感じてもらうというという方法をとりました。またこどもたちは進んで自分たちでスタントをやりました。時には僕のこどもと同じであまり言うことを聞いてくれなかったりもしました。

Q:ベルギーやフロリダの印象的なロケ地について、こだわった点は?

フロリダでは『シザーハンズ』のロケ地の近くで撮影しました。そのあたりの木々がとても高くなっていて様相が変わっていてショックだったです。僕はカリフォルニアのバーバンクで育ちましたが、そこと似たような郊外の住宅地で撮影しました。素晴らしい家を見つけて撮影でき、役者にとってもスタッフにとっても本物の建物の中で仕事をすることはインスピレーションを得る点でもとても大切だと感じました。

Q:「ありのままの自分を受け入れる」というポジティブなメッセージが心に残りましたが、ご自身の体験と何かリンクしていますか?

自分自身が経験したことを元にしていることもあります、よく周りからちょっと変わっていると思われる多くの人は芸術性に富んでいたり、静かな人であったり、いい人たちなのです。この作品にあるようなちょっと他の人と違うと思われていてもそれはいいのだということです。ちょっと奇妙なことがあったとしても、基本的には普通のこどもたちであることは大切なことだと思いました。

Q:『ダーク・シャドウ』に続いて起用したエヴァ・グリーンについて、第2のジョニー・デップになる可能性は?

ワハハハ! ジョニーは男で、エヴァは女ですからね。いや、エヴァサイレント映画の時代の女優のような雰囲気を持っていて、言葉を語らなくても伝えることができる人です。ジョニーとはちょっと違うのですがいろいろな要素を演じることができ、エモーショナルだったり、謎めいていたりという表現ができる役者です。そして何より鳥に変身しそうな感じがありました。

Q:最後の方で日本のアイテムが出るシーンがありました。そこには監督の特別な思いがありますか?

そのシーンは僕が書いたところで、日本に来て撮影したかったのですが資金が足りなくて、結局はアメリカのサウンドステージで撮ることになりました。そういう想いがこもっています。

Q:小物や衣装がとても可愛らしいです。監督のアイディアが反映されていますか。今日も靴と靴下がとてもかわいいです。

(靴と靴下を見せながら)僕はアニメーション出身ということもあって、映画のビジュアルや衣装、メイクもキャラクターの一部であると考えています。場合によっては自分で絵を描いてスタッフに説明します。見た目だけでなく感覚や気持ちを伝えることが重要なので、僕にとっては衣装や小道具はとても重要なものです。

MC:双子ちゃんは怖かったですね。

双子というのはカワイイと同時に怖いです。

 取材・文・写真:福嶋真砂代

(※この会見は2017年1月31日に行われました)

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(左横には本物の双子が描かれています)

仮面を脱ぐと⇩

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