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REALTOKYO CINEMA

リアルトウキョウシネマです。映画に関するインタビュー、レポート、作品レビュー等をお届けします。

Review 012『ブラインド・マッサージ』

Review

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監督:ロウ・イエ
原作:ビー・フェイユイ著「ブラインド・マッサージ」(飯塚容訳/白水社刊)
脚本:マー・インリー
撮影監督:ツォン・ジェン
キャスト:ホアン・シュエン、チン・ハオ、グオ・シャオトン、メイ・ティン、ホアン・ルー、チャン・レイ他
2014/中国=フランス/115分/中国語/カラー/1:1.85/DCP/配給・宣伝:アップリンク

ロウ・イエマジックが炸裂「見えないものこそ、真の存在」

原作は中国の人気小説家ビー・フェイユィの『推拿』。作家とは信頼関係があるロウ・イエ監督が改編して映画化した。これまでにもこの小説は中国でテレビドラマや舞台劇になっていて、映画がいちばん成功したと評されているらしい。

舞台は南京の盲人マッサージ院。幼い頃交通事故のショックで視覚障害者となったシャオマーの衝撃的なシーンが導入となり、成人してシャオマーが勤めるシャーとチャンが経営するマッサージ院に舞台が移る。そこへ若い恋人コンと駆け落ち同然で深圳を離れたシャーの同級生ワンが転がり込んでくる。コンが近くにいることで若いシャオマーが刺激され爆発寸前(!)となる……。他にも院内恋愛、院長の見合い、自分の「美」を見ることのない美しい女性盲人マッサージ師の話、そしてシャオマーが性的処理のために同僚に連れて行かれた違法な風俗店も並列で描かれ、シャオマーがそこで寂しげなマーという女性とおちる恋、などなど小説は群像劇でそれぞれ人物ごとのエピソードで章立てされているという。映画ではシャオマーをクローズアップしながら、周囲の人物らも濃く描いている。なぜ「南京」を選んだのかについて、ロウ・イエは「南京はどこか街に深みがあって、非常に魅力的です。時代に流されていない感じで」と語っている。撮影監督ツォン・ジェンの繊細、大胆、官能的なカメラワークとボカシを多用し盲人の視覚感を感じさせる編集によって感情を刺激し、臨場感を増幅する。

マッサージ院の院長シャー・フーミンをチン・ハオ。シャーの同級生ワンにはグオ・シャオトンと、ロウ・イエ作品の常連たちが恐るべき演技力で盲人を演じている。またシャオマーには新人ホアン・シュエン、彼は日中共同製作『空海-KUKAI-』(チェン・カイコー監督)で染谷将太とダブル主演する注目株らしいので要チェック。加えてというか、キャストの多くは演技未経験の実際の視覚障害者が主軸であり、その中でもワンの恋人コン役のチャン・レイのみずみずしい体当たり初演技に目は釘付けになる。チン・ハオは「80日にわたる撮影期間であの演技を続けられたのも目の不自由な出演者が一緒だったから」と述べ、不透明のコンタクトレンズをつけて演技をしていた健常者の俳優たちは盲人の俳優たちに助けられていたのだと語る。しかしその境界線がわからないくらいにリアルに描かれているのはロウ・イエマジックだろう。

中国当局検閲用のカット部分はごくわずか」とのことで、血が吹き出るシーン、セックスシーンは縮小して上映されたらしい。それでますます「『天安門、恋人たち』に対する、いわゆる技術的な基準というものは、いわゆるイデオロギーの面での検閲だったことがはっきりとわかりました」と、ロウ・イエ監督が検閲基準を再確認したという意味でも「挑戦」の作品だったと言える。それにしても前作『二重生活』での不倫、浮気というドロドロした愛憎劇から一変して盲人マッサージ師の世界を描く難関に挑んだロウ・イエ。しかしここでもロウ・イエ得意のメロドラマ的関係性は踏襲され、湿り気のある雨や水のシーンは美しく、ヨハン・ヨハンソンの音楽が控えめに支え絶妙にマッチする。

福嶋真砂代★★★★

映画『ブラインド・マッサージ』公式サイト

2017年1月14日(土)より、アップリンク渋谷、新宿K’s cinemaほか全国順次公開 

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