REALTOKYO CINEMA

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Review 10『壊れた心』

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(C)Kamias Overground/Rapid Eye Movies

 マニラのスラム、ビビッドに目に焼き付いたストライプパンツ 

フィリピンの詩人・小説家・映画監督であるケヴィン・デ・ラ・クルスが、クリストファー・ドイル(撮影)、浅野忠信(主演)とタッグを組んだ意欲作。デ・ラ・クルス監督の詩が短編映画『Ruined Heart Another Love Story Between a Criminal and a Whore』(ベルリン国際映画祭短編部門コンペティション上映)となり、この長編の元になった。東京国際映画祭(2014)で上映された後、クラウドファンディングにより今回の限定上映が実現した。なんと言っても見どころはクリストファー・ドイルジャムセッションのようなファンキーなグルーヴとスピード感あふれるカメラワーク。とりわけ浅野演じる「殺し屋」の腕のギブスに取り付けたGoPro映像、つまり”自撮り”で、狭い路地を疾走する「殺し屋」と「組織の女」のシーンはかなりクール。この「組織の女」(ナタリア・アセベド)のストライプパンツが目に焼き付いて離れない。実は東京国際映画祭上映を観た記憶が不覚にも薄れていたのだが、2度目の鑑賞でこのストライプというかシマシマが目に入った途端に脳を刺激し、すべての記憶が燦然と戻ってきた。かくもビジュアルインパクトと記憶は結びついているわけだ(なんて納得してしまった)。浅野忠信のニヒルでブッ飛んだ演技も、パンクな音楽も、ビビッドな色彩も鮮明に思い出した。と言っても、デ・ラ・クルス監督が「ピアニスト=傍観者」として出演していたことは言われて初めて気づいたけれど......。

福嶋真砂代★★★.5

 

台本・台詞、一切ナシ。

映画ファンを挑発する衝撃的フィルム・ノワール

あらすじ

マフィアが宗教と力で支配するマニラのスラム街。歪んだ愛情を持つマフィアのゴッドファーザーは女(ナタリア・アセベド)の護衛を最も信頼する部下(浅野忠信)に任せる。冷酷な殺し屋とワガママで衝動的な美女、二人が恋に落ちるのに時間は掛からなかった。追っ手が迫るなか、殺し屋と美女は街を捨てる。目まぐるしい映像とパンクオペラ的な音楽とともに展開していくストーリー。二人の逃避行は一体どこに辿り着くのだろうか…

浅野忠信 × クリストファー・ドイルの最強タッグ

ベルリン、ヴェネツィアロッテルダム国際映画祭で注目され、フィリピンのデジタル映画の父と言われているケヴィン・デ・ラ・クルス監督。撮影に迎 えられたのは香港、日本のみならずハリウッドでも活躍する生きる伝説、クリストファー・ドイル。そして日本を代表する俳優・浅野忠信が主演に抜擢され、 まさに国際的なアジア映画が誕生した。

tokyonewcinema.com

2017年1月7日(土)より全国順次ロードショー

 

第27回東京国際映画祭 | 壊れた心