REALTOKYO CINEMA

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Review 001『雨にゆれる女』

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(C)「雨にゆれる女」members

映像と音の粒子が感性に降り注ぎ、細胞に染み込んでくる。映像から音が、音から映像があふれ出て、湿り気を伴いながら身体にまとわりついてくるような感覚。邦画の中ではやはり異色の体験と言える。ホウ・シャオシェン監督やジャ・ジャンクー監督の作品の数々、また直近では森義隆監督の『聖の青春』(なんと同日公開!)の音楽を手掛け、音楽家として世界的に活躍する半野喜弘の待望の初長編監督作品が公開になった。

本名を隠し、現世から身を隠すようにひっそりと暮らす男(青木崇高)が住むバラック建てのような小屋に、同僚の男から見知らぬ理美という女(大野いと)を預け置かれてしまう。不運な過去を背負い、孤独を抱える男女が出会い惹かれあう。しかしお互いの傷の正体を知ったとき

{映像/色彩}{音楽/}は表裏一体」と半野は語る。そのユニークな創作過程によって粒子の細かい感情の雨が降り注ぐような感覚を生みだすのだろう。青木崇高が俳優デビュー前、ヨーロッパ放浪中にパリのカフェで偶然出会った半野との10年越しの夢の結実。その間、ふたりが蓄えた養分がたっぷり注ぎ込まれ、満を持してのコラボレーションは青木にとって初の主演作品になる。生の炎を消してなお燃え続ける「存在」として生きる複雑な状況下の男を演じ、これまでの派手なキャラ立ちした役柄と違う「無」になる快感を、無国籍な半野独特の世界観のなかで全身全霊で遊んでいるようにも感じる。弱さと強さが同居する女性を演じた大野いとの透明感も印象に残る。

福嶋真砂代⭐️⭐️⭐️⭐️

 

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(C)「雨にゆれる女」members

 

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